さらに、『陸王』の直後に主演した連続ドラマ『トドメの接吻』(日本テレビ系)では、金と権力を追い求めるホスト役に挑戦。それまでの王子様役とは対極にあるちょい悪役を演じた。
「“こんなクズホストも演じられるんだ”と感心しました。カネの切れ目が縁の切れ目と考えるクールな役なのに、彼が演じると貢ぎたくなる。嫌われ過ぎない悪役をいい塩梅で演じていましたね」
そうして王子様役からどんどん脱皮し、今回の難役をつかんだ。役作りにあたって山崎は病院を訪問して小児科医にヒアリング。障がいのある役も2日間のリハーサルを受け、自分なりに考えながら演じていたという。彼のこの作品への意気込みは相当だったようだ。
その背景には、「ライバルの存在がある」(沖さん)という。山崎と同年代には、竹内涼真(25)、菅田将暉(25)、福士蒼汰(25)、野村周平(24)ら、最近、目覚ましい活躍をしている役者が多い。竹内は連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK)、連続ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)などで大ブレイク。山崎と『トドメの接吻』でも共演した菅田は今年、映画『あゝ、荒野』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞、演技派俳優としての地位を確立しつつある。菅田は山崎とは友人で、山崎が「ダチでもありライバルでもある」とツーショット写真をSNSで投稿するほどお互い刺激し合う存在だ。
福士も朝ドラ『あまちゃん』(NHK)でブレイク後、キラキラした王子様役を演じながらも、『BLEACH』などのアクション映画に主演するなど演技の幅を広げている。野村は、10月スタートのドラマ『結婚相手は抽選で』(フジテレビ系)で連ドラに初主演、9月公開の主演映画『純平、考え直せ』がカナダで開催されるモントリオール映画祭への正式出品が決定するなど、確実にステップアップしている。
「20代前半のイケメン俳優は豊作で、しかも演技力も確かな役者がそろっています。そんな状況で、山崎さんは、彼ならではの武器を身に着け、イケメン俳優戦国時代を生き抜こうという覚悟が強くなったのでしょう。山崎さんは以前から努力家として知られるかたですが、今回も実際、病院まで行って役作りをしたと聞き、彼の並々ならぬ意気込みを感じます。
よくいろんな役を演じ分ける役者のことをカメレオン俳優といいますが、恋愛ドラマの正統派イケメンからアニメの実写版ヒーロー、素朴な青年、”クズホスト”、それから自閉症の医師まで、幅広く演じられる若手はそうそういません。同年代のライバルの中でも、際立った存在感を発揮していると言えます。今後、新しいタイプのカメレオン俳優として活躍するのは間違いありません」
次回作ではどんな顔を見せてくれるのか、“新カメレオン俳優”に注目が集まりそうだ。