◆「芸術作品」という言い訳
そのなかで発行された島田さんの『KirRoyal』は、陰毛の写ったヌードを期待していた人々からすると、やや拍子抜けする内容かもしれません。130点以上あるカットのなかで、陰毛の写った写真は、わずか十数点ほどです。
写真集の前半部分はフランス郊外にある美しい景色のなかに島田さんが佇んでいます。まさに芸術的な写真が並んでおり、スケベ心だけで見てほしくないという意思表示が感じられます。島田さんの表情からも「私はフランスで脱ぐのよ」という固い決意のようなものがうかがえます。
今でこそ、この手の写真集において「これは芸術作品である」と言い訳をする必要がなくなりましたが、この当時はまだ、当局から取り締まりを受けることのないよう、精一杯「芸術」というものを援軍としていた証ではないでしょうか。
もっとも、陰毛の写った点数が少ないとはいえ、当時の衝撃の度合いは計り知れません。陰毛の表現は、わずかな点数であっても、当時は見る人々を引きつけるのに十分でした。インターネットでいくらでも見られる今と違って、それだけ陰毛の商品価値は高かったのです。
「ヌード」というと、落ち目になった女優が選ぶ挽回の一手という印象がありますが、当時の島田さんは、1980年に大ヒットしたアメリカのテレビドラマ『将軍SHOGUN』でヒロイン役を演じて注目を集め、「国際女優」と呼ばれるほどでした。その彼女が、陰毛の見えるヌードを披露したのですから、話題性としても申し分ありません。