ライフ

【著者に訊け】白川優子氏 『紛争地の看護師』

『紛争地の看護師』を発表した白川優子氏

【著者に訊け】白川優子氏/『紛争地の看護師』/小学館/1400円+税

 思いのほか華奢で小柄な、「紛争地の看護師」である。8年前、国境なき医師団(MSF)に初参加して以来、シリア、イラク等々、世界を飛び回る白川優子氏。通算17回に及ぶ派遣活動を通じて知った現実を努めて坦々と綴る彼女は、一方でこんな憤りも吐露する。〈この空爆をやめてほしい〉〈武器の生産をやめてほしい〉〈誰に言えば伝わる?〉〈何回言えばよいのだ?〉

 劣悪な環境で激務に励む団員にとって、この空爆は肝心の医療を妨げ、自らの命をも奪いかねない最大の敵だった。それでなくても死が身近な現場へと彼女を駆り立てる原点は、幼い頃に見たテレビ番組だという。

「私が7歳の時です。私の母は昔からよく本を買い与えてくれ、私は戦争や差別に苦しむ人々の話を読む度に、なぜ同じ人間がいがみ合い、戦争するのか、わからなくて。そのせいか『協力/国境なき医師団』とクレジットのある番組をたまたま見、医療に国境があってはならないという姿勢に感激した時のことは、今でも鮮明に憶えているんです。

 その強い感動が1999年にMSFがノーベル平和賞を受賞したことで具体的な目標となります。どうも私は、理屈より心が反応するかどうかで、いつも大きな決断をしてしまいます(苦笑)」

 地元の「制服が可愛い」商業高校から一念発起して看護学校へ進み、海外留学や国内外の病院勤務を経て、36歳でMSFの一員となった。6月にイラク・モスルから帰国後の現在は本部で人事採用を担当し、後進の育成も大事な仕事の一つだ。

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン