人間にとって塩は必要不可欠な成分であり、十分な量の塩分を摂取していれば、本来人の体はそれ以上の塩分を要求しないような仕組みになっている。ラットの実験でも食塩摂取が十分であれば高濃度の食塩水には嫌悪応答が生じるという結果が出ている。

 ところが唐辛子に含まれるカプサイシンを同時に摂取すると、味神経に対する影響が出る。とりわけ顕著なのが、塩味への応答だ。タバスコ程度の高濃度カプサイシンを摂取すると塩味に対しての応答が有意に抑制される。一定以上のカプサイシンの辛味は、塩味を感じにくくしてしまうのだ。

 考えてみれば、とろーりチーズと辛味という組み合わせは、ピザやパスタといった糖質や脂質たっぷりの脳が抗えない料理でもおなじみ。最近、新大久保界隈では、チーズタッカルビのほかチーズ入りのサムギョプサル、さらにはチーズ入りホットドッグなど、右も左もチーズ!チーズ!チーズ!の趣だ。

 確かに新大久保の韓国グルメ復権の立役者はチーズに違いない。ただし、その食味や味覚のメカニズムを考えると、現在のチーズグルメ隆盛の土台は、韓国料理に常用される唐辛子が支えたという側面もあるのかもしれない。

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