「表の攻撃で何点が入ったかによって、裏の攻撃では作戦を選べる。点が入っていなければ送って1点を奪いに行くし、3点以上入ったら大量点を狙う作戦を選択できるわけですから」
この試合で大会史上初となる逆転サヨナラ満塁本塁打を放ったヒーローが済美の矢野功一郎だ。中矢太監督は「脇役タイプばかりのチームにあって、努力して打撃の飛距離を伸ばしてきた選手」と讃える。
ところで、“愛媛の矢野”といえば、1996年夏の決勝、熊本工業のサヨナラ犠飛を“奇跡のバックホーム”で阻止した松山商業の英雄もまた“矢野”勝嗣さん。愛媛のファンにとっては吉兆だろう。
さらに中矢監督は、明徳義塾のOBで、同校の馬淵史郎監督が星稜・松井秀喜を5敬遠した時の控え選手。甲子園で起こるドラマは、不思議な因縁を生む。
●取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)
※週刊ポスト2018年8月31日号