関西地方にあるA氏の実家を訪ねた。街道沿いにポツンと建つ3階建ての家は1階部分が飲食店になっている。前出の住民によると、「母親が切り盛りしている」という。お盆休み中なのか、店は閉まっていたが、家から出てきた母親を直撃した。
記者の呼び掛けに憔悴した面持ちの顔を上げた母親は、A氏のことを切り出すと、驚く様子もなく「何も喋ることはありません」と静かに告げてドアを閉めた。近隣に住むA氏の小学校の1学年後輩はこう話す。
「真面目で大人しく、試験でトップになるなど頭もよかった。“勉強のできる文化系”といった感じでしたね。ゲームが好きですごく上手でした。クラス内で目立つタイプではありませんでしたが、子供ながらに自分の意志は明確に持っていたような気がします」
A氏は今後、どうなるのだろうか。解放を巡る“交渉”は一筋縄ではいきそうにない。
「安倍首相が早期解放を求めれば、北朝鮮にとって有利な交渉カードを与えることになりかねない。日本が拉致被害者の返還を求めても、北朝鮮は『まず、この人質はどうするんだ』という材料にできる。官邸は表向き平静を保っているが、今後は相当、苦慮することになる」(官邸関係者)
対北交渉に、またひとつ難題が増えた。
※週刊ポスト2018年8月31日号