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【与那原恵氏書評】サリン事件犯がもらした執行直前の思い

『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』/アンソニー・トゥー・著

【書評】『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』/アンソニー・トゥー・著/角川書店/1400円+税

【評者】与那原恵(ノンフィクションライター)

 オウム真理教の元幹部ら十三人の死刑が執行された。地下鉄サリン事件発生後に私はオウムを数回取材したが、信者たちは事件とオウムの関連を一切認めなかった。教団は幹部と一般信者を分断する組織構造であり、個人としての考えや、問いを持つことを奪われ、もしくは放棄したのだろう。

 人は置かれた立場によってその役割を果たしてしまう律儀な恐ろしさを持っていると実感するのが、サリン製造に大きく関与した中川智正の告白である。

 彼と対話したのは台湾出身のアンソニー・トゥー(杜祖健)で、毒性学および生物・化学兵器の専門家である。松本と地下鉄両サリン事件で日本の警察に協力し、事件解明に寄与した。さらに二〇一一年末、オウムの兵器プログラム調査のため死刑確定後の中川に面会し、以後六年にわたり計十五回の対話を重ねた。なお、トゥーの父杜聡明は日本統治下での初の台湾人医学博士で、森於菟(鴎外の長男)らとの親交が知られる。

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