この時はNHKが日テレにケンカを売った形となり、ネットでは拍手喝采。さらに、この調査結果を基に「当事者たる障害者だって嫌がっている」式の批判が登場し、批判者を勢いづかせた。しかし、翌2017年は直前までマラソンランナーを発表しないという奇策もウケたか、歴代2位の視聴率18.6%を達成した。
この「当事者だって嫌がっている」的対立が最近はネットで発生している。それは、LGBTを巡る論争である。杉田水脈衆議院議員が「新潮45」で「LGBTは生産性がない」と書き、ネットでは批判が殺到し、抗議デモも各地で発生した。しかし、ツイッターやブログではLGBT当事者からも杉田氏に理解を示す声や、活動家がむしろ差別を助長しているといった批判も出た。
すると杉田氏批判の人々が、杉田氏の意見に賛同する「G(ゲイ)」の人物に対する批判を開始。その時に使われたのが「ネトウヨホモ」「ホモウヨ」という蔑称である。マイノリティ当事者であるが、「ネトウヨ」という差別主義者属性を与えることにより、糾弾されてしかるべきだと考えられたのだ。マイノリティへの差別を許さぬはずの反差別の人々が「ホモ」という差別用語を使うとはこれいかに。
さらに、在日コリアンの中でも「私は日本で差別を受けていないし、幸せ」的な声をあげる人もいる。すると「ネトウヨ在日」と反差別の人々から罵倒を浴びるが、さすがにこれは意味不明だ。
さて、24時間テレビに話は戻るが、同番組に対抗し、24時間渋谷スクランブル交差点を渡り47都道府県の出身者とじゃんけんをし続ける挑戦をした芸人・シェパード太郎はもっとホメられていいと思う。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。
※週刊ポスト2018年9月14日号