芸能

津川雅彦さん 織田信長役で「役者の真髄」を理解した

津川雅彦さんが大河の当たり役を振り返る

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、先日亡くなった俳優の津川雅彦さんが、歴史上の人物を演じたことで得た役者の真髄について、若い人たちへの理解について語った言葉を紹介する。

 * * *
 前回に続き今回も、先日亡くなられた津川雅彦を追悼して昨年のインタビューから未掲載エピソードをご紹介する。

 歴史上の人物を多く演じてきた津川だが、中でも最初に手応えを感じたのは一九六四年のテレビシリーズ『徳川家康』(NET=テレビ朝日)で織田信長役を演じた時だったという。

「一番面白かったのは初めて浮気をする場面だったな。正室のお濃を恐れているんだけど、あえて『わしは妾を持つ』と宣言して馬で出て行くんだよ。

『こういうことなんだな、こいつのすごさは』って思った。お濃も怖い人なんだ。でも、だからといってウジウジと『ちょっと妾をつくっていいかな』みたいなことは言わないんだよ。

 桶狭間の戦いがそうだったように、そういうふうに人の意表を突くっていうことが彼の真髄だったんだ。で、それは役者の真髄でもあると思ったんだ。

 それで、そういう信長らしいセオリーを芝居にも活かそうと思ったのさ。つまり、人がこうと思うことの逆をやる。上と思ったら下に、裏と思ったら表っていうふうに、真逆真逆をやっていく。それも、ただ嘘をつくだけじゃなくて『えっ』『あっ』『なるほど』と思わせる。

 ただ意表を突くんじゃなくてね。最後に『なるほど』がつかないと桶狭間にはならないわけさ。そういう芝居を自分なりに発見していったんだよ。じゃあ、このときには信長はこういう言い方をするだろう、と。

 そのとき、生まれて初めて、周りがみんな『おまえ、いいぞ』っていう顔をしてくれるようになったんだ。『兄貴の芝居はうまいけど、弟は顔はいいのに下手』っていうレッテルがやっと剥がれてきたと思えたよ」

関連記事

トピックス

6月6日から公開されている映画『国宝』(インスタグラムより)
【吉沢亮の演技が絶賛】歌舞伎映画『国宝』はなぜ東宝の配給なのか 松竹は「回答する立場にはございません」としつつ、「盛況となりますよう期待しております」と異例の回答
NEWSポストセブン
さいたま市大宮区のマンション内で人骨が見つかった
《さいたま市頭蓋骨殺人》「マンションに警官や鑑識が出入りして…」頭蓋骨7年間保管の齋藤純容疑者の自宅で起きた“ある異変”「遺体を捨てたゴミ捨て場はすごく目立つ場所」
NEWSポストセブン
大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン