談春:島では逃げられないですからね。
鶴瓶:逃げられないし、まだ会って最初の頃でちょっと遠慮もある。「もうやめませんか?」と言ってみるんだけど、終わらない。そんなに打ち解けてるわけでもないから強くも言えない。今だったら「もうええやろっ、いい加減にせいや」と言えるけど……。でもまあ、そこが面白いといえば面白い。まっさん、ずっと本気でやってんねん。
談春:談志もそうでしたが、あの人たちは馬鹿馬鹿しいことほど真剣にやるんです(笑)。でも鶴瓶師匠も結構、張り合ってますよね? まさしさんは遠慮しているより、張り合ってくるほうが喜びますからね。本人も張り合いたい(笑)。『かすてぃら』もそうだと睨んでるんですけど、あれね、僕の『赤めだか』に対して腹立ったんですよ(笑)。
鶴瓶:どういうこと?
談春:あの本を出した時、まさしさんに「あの本、評判いいなあ」と言われたから、正直に言ったんです。「あ、あれね、『さだまさし』の文体で立川談春を書いただけですから」って。僕、学生の頃、写経するように、まさしさんのアルバムのライナーノート、一字一句ノートに写してたんです。よく、小説家志望の人が、芥川龍之介や夏目漱石を書き写すっていうでしょ? あれを僕は、「さだまさし」でやったんです。そしたらそのあと、『かすてぃら』が登場した。読んだら、まさしさんの20代の頃の文体(笑)。『茨の木』とか『解夏』とか、文体も引き出しもたくさん持っている人だけど、『かすてぃら』は昔のさだまさしだった。あれ、きっと『赤めだか』が悔しかったんです(笑)。しかし無茶苦茶な人に限って、くだらないことで人に張り合う(笑)。談志もさだまさしが大ッキライでしたから(笑)。
鶴瓶:そうなの?
談春:一度、聞いたことがあるんです。なぜですかって。そしたら、「さだまさしってのは、ウケてるんだろ? 歌手なんだから歌ってりゃいいじゃねぇか。なんでしゃべるんだよ」。談志がそれを知っているのもすごい(笑)。また、おかみさんが『秋桜』とか『無縁坂』がとっても好きで、「でも私は好きなのよ」って余計な茶々を入れる。「そういうことじゃなくてさ、歌ってろって伝えとけ」って言うから、ああこの人、俺がまさしさんと付き合ってるって知ってるんだなあって驚いた。談志は自分以外がウケるのが許せないんです(笑)。
※さだまさしとゆかいな仲間たち・著/『うらさだ』より