日本人最強の総合格闘家・堀口が那須川の本業であるキックボクシングで戦う。そういった経緯から、総合格闘家だったKIDがK-1の魔裟斗の挑んだ14年前の一戦の再来とも例えられている。
上記したように日本の格闘技ファンは、格闘家が綴る物語を重要視する。魔裟斗vsKIDの時代は、TBSの深夜番組『格闘王』で舞台裏が流れていた。時代が変わった現在、格闘家のドキュメンタリーも民放からYouTubeへ。配信という形式で公開されている。なかでも、堀口VS那須川を企画した『RIZIN』が配信する動画シリーズ『RIZIN CONFESSIONS』のクオリティは高い。
選手の日常生活に密着しながら、それぞれが話す“CONFESSIONS(告白)”にスポットライトが当てられる。家族や恩師たちが語る選手の人間性など、様々な角度から戦う意義を捉え、試合を立体的に映し出す。
誰もが見られる民放から情報を求める人が選んで見るYouTubeへと変わったこともあり、マニアックに格闘技を深掘り。ワーキャー叫ぶレポーター役の女性タレントもいない硬派な世界観。格闘技ブームの頃は、スターを映すドキュメンタリーだった。しかし、現在はスターを生み出すものへと変化。個々の派手さがない代わりに、素の表情を映す。格闘技を身近な競技として捉え、戦う行為の純粋さをピックアップ。よって練習風景、試合解説、技術論に多くの時間が割かれる。また、『RIZIN CONFESSIONS』のスポンサーはアプリゲームだ。CMの代わりとして、密着される格闘家がゲームに興じる姿も収められる。こういったところが今っぽい。
近々の『RIZIN CONFESSIONS』が描いていたのは、もちろん堀口VS那須川について。この一戦は、2018年5月6日に行われた『RIZIN.10』で堀口が那須川に宣戦布告したことから始まった。堀口は「日本の格闘技を盛り上げるためにやる。どっちが勝つか、ファンがあーだこーだと予想したくなる試合をしよう!」と那須川に挑戦状を叩きつけた。「天心君は、いい子なんだけど、どこかで天狗じゃないかなぁと思ってる。だから、その鼻を自分がへし折ろうかな」と堀口は語る。対して那須川は「自分は堀口選手をリスペクトしてますけど、試合になったら絶対に勝ちますよ。甘く見るなよ」と返答。
堀口、那須川ともに語る内容は過激だが口調は淡々。KIDもそうだったが、強い人は妙に冷めている。そこが恐ろしくもあり、魅力的でもあり……。