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高齢者の孤独に寄り添う「傾聴」の方法、提案と慰めはNG

「傾聴」で高齢者の心に寄り添い、提案と慰めはNG(写真/アフロ)

 親が高齢になり、支援や介護が必要になったときの苦悩は、必ずしも目に見えることばかりではないだろう。認知症の親が何度も同じ話を繰り返したり、不可解な言動に困惑させられたり、高齢の親への対応に苦慮する子世代も少なくない。が、きっと老いた親たちもつらいはずだ。

 そんな高齢者や介護家族の相談にも乗っている臨床心理士の原千恵子さんに、少々わかりづらくなった親たちと心を通わせるコツを聞いた。

◆高齢者の心を理解するための技法『傾聴』

「高齢者、特に認知症などでコミュニケーションが取りにくくなると、若い頃とは違う人格になってしまったように思えて戸惑い、心の中まで見えなくなります。乱暴な言動で困らせたりする高齢者が、実はとても大きな孤独感や不安を抱えているとは、なかなか思いがおよばないでしょう」と、原さん。

 原さんは、高齢者が集まるデイサービスを営むほか、多くの施設に出向き、臨床心理士として高齢者をはじめ、不登校児や精神疾患の人などのカウンセリングを行っている。

「高齢者は、せわしない社会の中で取り残されたような寂しさを抱えています。体の機能が衰えたり、また認知症があって記憶や時間、場所の感覚があいまいになったりすればなおのこと。周囲とは隔離されたような心境です。たとえれば、まったく言語がわからない外国に放置されたような感じでしょうか。電車に乗ってもどこへ向かうのかわからない。助けを求めても通じない。自分がどうなってしまうのか、先行きの見えない恐怖と絶望。そんな孤独感と不安が、高齢者の不可解な言動の背景にはあるのです」(原さん、以下「」内同)

 人の怒りや喜びには気づきやすいが、孤独や寂しさは、注意深く見ていないと見過ごしてしまうかもしれない。

「それでも見知らぬ外国で、日本語が通じて自分の状況を理解してくれる人に巡り合えたら、どんなに嬉しくて、生きる力が湧いてくるでしょう。このように、孤独で不安な心を理解して寄り添うための技法に『傾聴』があります」

『傾聴』は、臨床心理士などプロが行う心理カウンセリングの技法の1つだが、そのノウハウは日常の中で家族に大いに活用できるという。

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