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死なせないために何ができる いじめの現実に迫る渾身ルポ

長年、いじめの問題を取材してきた岸田雪子さん(撮影/五十嵐美弥)

【著者に訊け】岸田雪子さん/『いじめで死なせない 子どもの命を救う 大人の気づきと言葉』/新潮社/1512円

【本の内容】
〈子育てでは、知っているのと知らないのとでは大きく違ってくることがある。例えば「二歳のころはイヤイヤ期とも呼ばれ、反抗するものだ」と知っていれば、そのころの子どもが何でもかんでもイヤ!と言っても、驚かずにいられる。いじめの対応にも似たところがあり、親が知っていれば、いじめ被害も、加害行為も減らすためにできることがあるはずだ〉(「はじめに」より)。悲劇を生まないために大人にできることを取材を通して明らかにする。

 日本テレビの記者として長年、いじめの問題を取材してきた岸田さん。20代のとき社会部記者としていじめによる少女の自殺を取材したことがきっかけで、その後、政治部に異動したり、報道キャスターとして現場を離れたりしたあいだも、時間を見つけては学校やフリースクールを訪ね、子どもたちの声を聞いてきた。

「いじめの被害を受けた子どもたちの声がきちんと大人に届いていないことが、いじめが繰り返される原因の1つではないかと思うんです。子どもが健やかに生きられる環境をつくるのは大人の役割です。もっと実態を知って、それぞれできることを考えなければ、とこういうタイトルにしました」

 心を押しつぶすようなひどいいじめを経験し、大人になってからも後遺症に苦しむ人も少なくないそう。耐えきれず、死を選ぶ子どももいる。本では、子どもから発せられる「SOS」のサインや、それをキャッチした親がどう行動したか、といった例が具体的に紹介されている。

 いじめが原因で子どもを亡くすといういたましい経験をした親御さんも、岸田さんに胸のうちを語っている。

「二度とこういう悲しいことを繰り返してほしくないからこそ、話してくださるのだと思います。知ってさえすれば防げる、子どもだけで解決できる問題ではない、という思いがあって、貴重なお話を聞かせていただきました」

 東日本大震災で被災、福島から横浜に引っ越した小学生が、転校先の学校で「賠償金があるだろう」などと言われ金銭を要求されていた事件は社会問題化したが、その彼にも直接会って話を聞いている。

「口数は少ないけど、信念が伝わってきました。『震災で人がいっぱい死んだからぼくは生きると決めた』と彼は書いているんです。実は、震災で親しい友だちを亡くしている。小学生にとって重すぎる経験ですが、命が失われることの悲しさを知っているからこそ、生きようと心に決めることができたのですね」

 つらい時期を乗り越えて生き延びた子どもたちの声は、今苦しんでいる子どもたちにこそ届いてほしい。

■取材・構成/佐久間文子

※女性セブン2018年10月18日号

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