その1つがカリフォルニア大学ロサンゼルス校助教授の津川友介医師による研究だ。津川氏が160万人の症例を調査すると、内科医だと年齢が上がるほど患者の死亡率が高くなり、外科医だと逆に年齢が下がるほど患者の致死率が上がる結果になったのだ。
「一般に医師は高齢になるほど“経験”に重きを置き、若手は“知識”で診断する傾向があります。外科の場合、手術の技術向上には経験が必須ですが、内科は年齢を重ねるほど新薬をはじめとした最新の知識に追いつけなくなる面がある」(米山医院院長の米山公啓氏)
不整脈の一種である心房細動などの治療薬として知られる抗凝固薬・ワーファリンは血が止まらなくなるなどの副作用がある。しかし2011年に副作用の少ない抗凝固薬・プラザキサが登場。
「若い医師ほど患者の症状に合わせてプラザキサを積極的に処方する一方、高齢医師は“これまで大きな問題はなかったから”という理由で、いまだにワーファリンを処方し続けている傾向がある。鼻血が止まらないなどの副作用症状から解放される機会を逃している患者も多いと考えられます」(医療ジャーナリスト・油井香代子氏)
経験が足りないが故に、若手医師が正確な診断ができないケースもある。痔と大腸がんは症状がほぼ共通しているため見極めが難しいことで知られる。便に混じる血の色などから専門クリニックでの検査へと繋げる判断には「経験がモノをいい、若手医師だとがんを見逃すケースが少なくない」(米山氏)という。
※週刊ポスト2018年10月12・19日号