しかも、この変化はあまりにも遅々としている。たとえば中国のQRコード決済の利用者は、すでにアント・フィナンシャルの「アリペイ(Alipay=支付宝)」が約5億人、SNSとオンラインゲーム最大手テンセントの「ウィーチャットペイ(WeChat Pay=微信支付)」が約9億人に達している。利用者は重複しているが、それを勘案しても中国人の大半は両方、もしくはいずれかのQR決済サービスを使っているわけだ。
その結果、決済だけでなく貯金や資産運用、融資などの金融サービスも両社が手中に収め、一時は中国全土に普及した「銀聯カード」や、融資を受けるのが難しい国策銀行は、あっという間に凋落してしまった。
経産省はキャッシュレス決済比率を2025年に40%に高めることを目指しているが、そう簡単にはいかないだろう。なぜなら、世界的にQR決済革命というシー・チェンジが起きているにもかかわらず、その意味を多くの日本企業が理解していないからである。
たとえば、三菱UFJ銀行などのメガバンクは独自のデジタル通貨の発行を目指したり、QR決済の実験をしたりしている。しかし、それらはあくまでも自己都合優先で顧客は二の次だ。本来は蓄積されていて然るべき顧客の信用情報もビッグデータとして活用できず、そのサービスは高コストの全銀システム(※注)をはじめとしてフリクション(摩擦)だらけである。
【※注/全国銀行データ通信システム。決済業務の中核を担うオンラインのデータ通信システムで、日本のほとんどの預金取扱金融機関が参加しており、そのコストは預金者の手数料によって賄われている】