狙った2頭が1着3着、2着3着でも的中となるワイドは、中央競馬では馬単より先に導入された。「射幸心をいたずらにあおる」ことへの懸念があった時代、低配当でも、より当たりやすい馬券でファン層拡大を狙ったのだろう。事実、先月の中山開催でも、上位人気5頭のボックス買いをしていれば、9日間のうち3日間は全レース的中している。同額ずつ買っていれば、うち2日はわずかながらも黒字になっているのだから侮れない。
しかし、これも「とにかく当てたい」という初心者だけでなく、複勝ファン同様、年季の入った「ワイドファン」がいる。たとえば1頭だけ抜けて強そうな場合に2、3着馬を当てに行く。あるいは上位人気が堅そうなときに、一角を崩すような馬を軸にして流すことで、馬連以上の配当を得られることもある。つまり「ワイド向き」のレースがあるというのだ。
人気薄2頭の組み合わせでないと高額払戻は望めないので、むしろ中穴狙いに妙味がある。パドックや返し馬で気になった単勝オッズ20~30倍程度の馬から人気上位に流す。「3着でもいい!」となればゴール前での粘りや強襲も楽しみだし、うまくいけば2点的中ということもある。
なお、ワイドの最高払戻額は昨年12月の中京7レース。1着15番人気→3着14番人気の12万9000円で、人気薄同士によるものだった。しかし2着は6番人気なのに、馬連は36万円もついている。1、2着がらみのワイドを獲った時は「馬連も買っておけばよかった」と思うことが多い。知人の穴党は、ワイドを500円ずつ流すつもりの時、そのうち100円だけでも馬連にしている。当たった時にまで後悔したくないというのだ。
●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
※週刊ポスト2018年10月26日号