1着何万円もするような、いわゆるシルバー婦人服を製造・卸売りしている某メーカー担当者も、
「当社は顧客層を若返らせることなく、顧客の年齢に合わせてきたが、60代・70代前半では奮発して高額な服を買っても、80代が見えてくると高額な服を買わなくなる」
と現状を説明しています。日本人の平均寿命は男性80歳・女性88歳です。高額な服を買ってもあと何年も着られない可能性が高いから、もったいなくて買えないという心理が働くようです。また、体力も弱り外出するのも億劫になる人が増えます。
「それでも昔の高齢者は百貨店に行って高い服を買っていたじゃないか」という声もありますが、昭和の百貨店全盛期は“安い割にマシな服”がなかったのです。その代表がユニクロでしょう。平日の昼間にユニクロを覗くと、あまりのシニア層の多さに驚くはず。普段着やちょっとした外出はユニクロの服で十分満足と考えているのです。
それを反映してか、いまだに日本で大成功したシルバーブランドは出現していません。「富裕な高齢者が高い洋服を買ってくれる」というのは、現時点では業界人の願望に過ぎないといえます。
それよりも日々の生活でニーズの高い「食品」や「贈答品」などを強化・拡充するほうがよほど百貨店の業績アップにつながるといえます。そのあたりを冷静に考えない限り、地方百貨店が生き残ることは難しいのではないかと思います。