国内

阪神・淡路大震災 被災者に手話でサインを送った美智子さま

泣き崩れた被災女性を皇后が抱きとめられ励ました(共同通信社)

 たくさんの土地を訪問されている天皇皇后陛下。即位後の総移動距離は62万kmを超えるという。そんな陛下の旅の丹念な調査によって、「平成という時代」や「両陛下の信念」を浮かび上がらせた一冊『旅する天皇 平成30年間の旅の記録と秘話』(小学館)を上梓したのは、歴史探訪家で、文筆家の竹内正浩さん。竹内さんとともに、天皇陛下の印象的な「旅」を振り返る。

■平成7年(1995年)1月31日 阪神・淡路大震災

 1995年1月17日、阪神・淡路大震災が発生した。阪神高速道路の高架がなぎ倒され、約18万棟もの建物が倒壊する映像に国民は言葉を失い、死者・行方不明者は6437名に達した。

 地震発生から2日後、遺族に哀悼の意を表し、救済と復興を衷心より願う天皇陛下の「おことば」が発表された。災害直後に「おことば」が出されたのは戦後初めてだった。

 その12日後の1月31日、両陛下は余震の続く被災地をバスに乗車して訪問された。

「現地の迷惑にならないよう、両陛下は最小限の同行人数で被災地を回られ、肉親を亡くし、避難を余儀なくされるなどつらい思いをした人々の話に耳を傾けられました」(竹内さん)

 底冷えのする体育館でスリッパも履かず、床にひざまずいて被災者一人ひとりと言葉を交わされる両陛下の姿は多くの人に感銘を与えた。

 とりわけ心に残ったのは美智子さまのふるまいだ。

 大震災の爪痕が残る神戸市長田区の菅原市場を訪問された際、美智子さまは、その日の朝に皇居で手ずから摘んだスイセンの花束を瓦礫の上にそっと置き、天皇陛下とともに深く頭を下げられた。

 さらに被災地を離れる際、美智子さまはバスの外で見送る人々に向かって、両手を握りしめ、体のわきで力強く、2度下ろされた。

「『がんばってください』という手話のサインでした。美智子さまは沿道の被災者に向かい、何度も何度もこの動作を繰り返されました」(竹内さん)

 それは、平成皇室の新しい姿を物語る場面だった。

※女性セブン2018年11月8日号

関連記事

トピックス

公選法違反の疑いで刑事告訴され、書類送検された斎藤知事(左:時事通信フォト)と折田楓氏(右:本人SNS)
“公選法違反疑惑”「メルチュ」折田楓氏の名前が行政SNS事業から消えていた  広島市の担当者が明かした“入札のウラ側”《過去には5年連続コンペ落札》
NEWSポストセブン
コンサートでは歌唱当時の衣装、振り付けを再現
南野陽子デビュー40周年記念ツアー初日に密着 当時の衣装と振り付けを再現「初めて曲を聞いた当時の思い出を重ねながら見ていただけると嬉しいです」
週刊ポスト
”薬物密輸”の疑いで逮捕された君島かれん容疑者(本人SNSより)
《28歳ギャルダンサーに“ケタミン密輸”疑い》SNSフォロワー10万人超えの君島かれん容疑者が逮捕 吐露していた“過去の過ち”「ガンジャで捕まりたかったな…」
NEWSポストセブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
反論を続ける中居正広氏に“体調不良説” 関係者が「確認事項などで連絡してもなかなか反応が得られない」と明かす
週刊ポスト
スーパー「ライフ」製品が回収の騒動に発展(左は「ライフ」ホームページより、みぎはSNSより)
《全店舗で販売中止》「カビだらけで絶句…」スーパー「ライフ」自社ブランドのレトルトご飯「開封動画」が物議、本社が回答「念のため当該商品の販売を中止し、撤去いたしました」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
「全てを話せば当然、有罪となっていたでしょう」不起訴になった大物地面師が55億円詐欺「積水ハウス事件」の裏側を告白 浮かび上がった“本当の黒幕”の存在
週刊ポスト
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
「お笑い米軍基地」が挑んだ新作コント「シュウダン・ジケツ」(撮影/西野嘉憲)
沖縄のコント集団「お笑い米軍基地」が戦後80年で世に問うた新作コント「シュウダン・ジケツ」にかける思い 主宰・まーちゃんが語る「戦争にツッコミを入れないと」
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン