「産後うつの大きな原因は出産によるホルモンバランスの急激な変化と、育児不安です。真面目で完璧主義なお母さんほどなりやすいのが特徴で、理想通りの育児ができなかったり、思うように家事がこなせなかったりすると、自分を責めて追い込んでしまう。そのように、育児のつらさを自分ひとりで抱え込み、孤立した心理状態の中では、子供に対してもイライライしやすくなり、虐待が起こる状況が生まれてしまう」

 実際、出産に関する総合サイト『コンビタウン』が産後うつを経験した母親約860人を対象としたアンケートでは、12%が「子供に愛情をもてなくなった」と回答している。

「雄大との実子が弟だったことも、優里が虐待を容認してしまった大きな理由だと考えられます。いまだに地方では“男の子=跡取り”という感覚が根強い。そのうえ、夫方の実家に対して自分はバツイチで子持ちというコンプレックスもあり、子育てにプレッシャーを感じていたのではないでしょうか。シングルマザーの経験があり、もし夫に捨てられたら経済的にも身体的にもしんどい生活に戻らなければならないという恐怖心も、虐待を容認した一因だったのかもしれない」(片田さん)

 結愛ちゃんのノートが公開されたあとも、虐待事件はあとをたたない。今月に入ってからだけでも、香川では1才の女児が両親から布団にたたきつけれられて重体に陥り、千葉では乳児が父親に肋骨の骨を折られる事件が発生した。

 結愛ちゃんの虐待事件についての報告書では、児相の人員や施設を増やすなどの改善策が提示されたが、われわれにできることはないか。元児童相談所職員の山脇由貴子さんはこう語る。

「ベランダに出されていたり、夜中にうろうろしている子供がいたら、110番する、また“あの家庭がおかしい”と感じたら、通っている保育所や幼稚園、小学校、そして保健所に一報を入れることも、抑止力につながります。虐待をなくすことは非常に難しいが、一人ひとりが関心を持つことで、少しずつですが確実に社会は変わってゆくはずです」

 優里の実家には、ロングヘアに眼鏡をかけた初老の女性がひとりで住んでいた。記者が「優里さんのお母さんですか?」と問いかけると、力なく「はい」と答えたあと、悲しそうに目をふせ、「すみません。何もお話できません。…無理です。無理なんです。すみません…」と続け、家の中へと戻って行った。

※女性セブン2018年11月8日号

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