中川:2017年9月に、朝鮮半島からの渡来人にゆかりのある、埼玉の高麗神社に天皇が参拝した件ですね。
橘:なんでこんな奇妙奇天烈な主張が出てくるかというと、「高麗神社に行くのは日本人じゃないから」でしょう。彼らの論理では、「日本人」じゃなければ「在日」であり「反日」で、だから「今上天皇は反日」ということになる。ただ、天皇が反日だったら、日本っていう国はどうなっちゃうのでしょうか……。靖国神社の宮司も「今上陛下は靖国神社を潰そうとしてる」と言ってますから、ネトウヨだけじゃなく保守論檀も底が抜けてきたみたいなところはありますよね。
最近のネトウヨは、自分たちを「ネトウヨ」と言われることを嫌がって、「(グローバルスタンダードの)リベラル」を自称するようになってきてますよね。これは安倍首相が、「私がやっていることは、かなりリベラルなんだよ。国際標準でいけば」と発言したことがきっかけだと思いますが、「ネトウヨ=ヘイト」の図式がさすがに都合が悪くなってきたのでしょう。これからは「保守」と「リベラル」が対立するのではなく、みんなが「リベラル」になって罵り合う、わけのわからない状況になるんじゃないかと予想しています。(続く)
◆橘玲(たちばな・あきら):作家。1959年生まれ。2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『言ってはいけない 残酷すぎる真実』『(日本人)』『80’s』など著書多数。
◆中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):ネットニュース編集者。1973年生まれ。『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『夢、死ね! 若者を殺す「自己実現」という嘘』『縁の切り方 絆と孤独を考える』など著書多数。