中川:生産性っていう言葉でいうと、「女は産む機械」と発言した元大臣(柳澤伯夫元厚生労働相)がいたじゃないですか。自民党支持者であっても、今回の「生産性発言」を聞いて、その時のことを思い出して、生理的に嫌だと思った人はたくさんいたんじゃないかと思うんですね。だから杉田氏擁護の数は集まらないという話でしょう。
橘:日本社会の底流にあるのは「このままだと中国に支配されるんじゃないか」「韓国に経済力で追い越されるんじゃないか」という不安なので、同性婚やLGBTを攻撃対象にしても、「反日」「売国」ほどの支持者はいないですよね。日本社会もリベラル化していて、「同性愛だって自由恋愛なんだから、差別するのはおかしい」という価値観に急速に変わっている。「生産性」発言の議員は、ニューヨークの国連関連イベントで「慰安婦は性奴隷ではない」と訴えて知名度を上げた人ですよね。それで「ジャンヌ・ダルク」などと持ち上げられ、ネトウヨが好きそうなテーマを次々と選んでいったら地雷を踏んだ、ということだと思います。あと、議員として多額の税金を受け取っているのだから、批判されて逃げるのはおかしいですよね。主張は表現の自由だと思いますが、あれだけ生活保護受給者の「自己責任」を批判しているのだから、税の受給者として、自分の書いたことへの「自己責任」をとるべきです。
中川:私は、政治家としての実力とは関係なく、立ち位置と党派性を明確にすることで生き残りをはかっている女性国会議員が3人いると思っています。それが、杉田氏と稲田朋美氏と片山さつき氏です。彼女たちって、元々政治家でも何でもないし、二世でもない。そんな人間が、いかにして支持基盤を作るかっていう時に、“安倍的なもの”というか、やや右に寄っている支持者にウケることを言えばいいという戦略を採ったような気がします。たとえば片山氏については、以前、元夫である舛添要一さんが『SAPIO』誌上でこう述べていました。
〈片山は上に媚びるのが苦手なタイプです。でも、隣には取り入るのがやたらとうまい稲田や小池がいる。さらに自分以外の女性議員はどんどん出世して大臣になる。片山は焦るわけです。自分は元大蔵官僚で、しかもミス東大なのになぜ出世できないのか。稲田が安倍さんに重用されるのは右派だからだ。それなら私も右に行けば出世できるのではないか──結果、在特会のデモに参加してしまう〉
今は大臣になりましたが、片山氏は別のファン層を獲得するために、そういう思想を持っている風に振る舞っているだけなんじゃないかと思うんです。
橘:片山さんは賢い人だから、選挙で票を入れてもらうことがすべてだとよく分かっているのでは。その結果開き直ったというか、右派が好きそうなことを言っていれば得票率が上がると悟ったのかもしれませんね。政治家は、選挙に落ちたら「ただの人以下」ですから。旧民主党の惨状を見たら、ほとんどの政治家は「私はリベラルです」なんて怖くて言えないですよ。それが最大の問題ですね。