◆「今上天皇は反日」という主張はどこから来たのか
中川:さっきの弁護士の話の前段を思い出したんですけど、“ウヨマゲドン”というのがあったんですよ。在日コリアンを中心とした特別永住者を対象とした、外国人の登録証明の制度が変わる時のことで、「2015年の7月9日までに、証明書を切り替えてください」というだけなんですね。ところが、どこかのバカネトウヨがこれを曲解して、その日までに帰国をしなければ強制送還になるというデマに変えて、周囲にいる在日を通報しようという運動にしたんです。しかも、摘発されたら数万円の報奨金が出る、という話にもなりました。その時に通報する対象の在日ってだれかっていうと、ネットにある真偽不明の通報リストっていうものです。そして、一斉にこのリストに載った奴は入管に通報しようということになりました。
この伝言ゲームがどんどんおかしくなっていったのですが、あまりにもネトウヨ側の事実誤認がアホ過ぎてすっかりお笑いの対象になってしまいました。そこで、ハルマゲドンにかけて、ウヨマゲドンと揶揄される材料になったんですね。そういう失敗を経たのに、弁護士の件で失敗をまたやっちゃったっていう。学んでないんですよ、全く。
橘:ネトウヨに特有の「在日認定」という行為があるじゃないですか。これっていったい何なのかと考えて、彼らには「日本人」というアイデンティティしかないから、誰が「日本人」で誰が「日本人」でないかの境界線がどうしても必要なんだと思い当たりました。白人至上主義者の場合は、「俺たち(白人)」か「奴ら(有色人種)」かは肌の色を見るだけでわかるじゃないですか。ところが国籍をアイデンティティの指標にすると、外見だけでは区別がつかなくなる。だから敵を片っ端から「在日認定」して、「奴ら」の側に排除しなくてはならない。そういう意味で「在日認定」は、自分の不安を抑えるための心理セラピーみたいなものなんでしょうね。「認定」される側にとってはヒドい話ですが。
中川:彼らの中には「日本人だったらこんなことはやらないはずだ」っていう考えがあるはずです。東日本大震災の時もそうだし、2014年の広島の土石流災害の時もそうだし、2016年の熊本地震の時もそうですけど、毎回、ツイッターで韓国人の窃盗団が出たというデマが流れるんですよね。確かに窃盗団はいたかもしれない。ただ、それを在日とか、韓国からわざわざ来たと言わないと、オレたち日本人が極悪人になってしまうと考えてしまう。そうした自己防御の行動が、いびつな在日認定の意図なのかなと思います。
橘:一番驚いたのが、「今上天皇は反日」という主張ですね。