私はロシヤをロシヤと書く。新聞などでは校閲部からチェックが入る。ロシアにせよ、と言うのだ。しかしロシヤ語ではロシヤと言う。綴りもロシヤ文字(正しくはキリル文字)でРоссия、ラテン文字ならRossiyaだ。そう反論すると、それなら注を付けてくれと言う。しかたなく「ロシヤ(原綴)」などとする。面倒でかなわん。ブルガリヤも同じくヤである。ところが、ルーマニアはア。そして、マケドニアは、マケドニヤ語ではヤ、ギリシア語ではア。この辺になると、私も使い分けがいいかげんになる。お手挙げだ。
結局、自分が知っている範囲でヤ・アを使い分け、あとは何となく惰性でヤともアとも書く。池上彰の記事でもギリシャ・ギリシアの両方が出てくる。何かの意図があるらしい。
しかし、さらに考えれば、ギリシャは自らをギリシャとは言わない。ギリシアとも言わない。エラダかエラスである。先に言ったヘレニズム(ギリシャ風)の語原である。ギリシャ神話のヘレンに由来する。ただ、欧米のほぼ全部の国でギリシャ、またその同系音で呼ぶ。十六、七世紀に活躍した画家エル・グレコは、ギリシャ人だったためスペイン語で「ギリシャ人El Greco(英語ならThe Greek)」と呼ばれた。
二〇一五年にも類似の問題が起きた。