公判に提出された証拠や彼の話によると、栗田被告の父親は分からない。母は彼を産んですぐに施設に預けた。そして5歳のとき、里親に引き取られた。
「施設の外は新しい世界が広がってて、全く風景が違うんだよね。それで髪の毛に興味を持った。ロングの黒髪が好き。だけど当時はなんとなく髪の毛に興味があるという感じ。姉が髪の毛が長かったんでよく触ったりしてた」
彼は小学校3年生のときに、黒髪ロングの同級生の髪の毛を無理やり切った。「これが始まりじゃないかな」と栗田被告は自ら振り返る。姉や同級生、そして街中、あらゆる女性の髪の毛に関心を向けた。栗田被告によれば「触ってみたい」という気持ちは小学校時代にエスカレートし「欲しい」に変わった。そうして同級生女子の髪を切り始めたのである。加えて、死体への興味も生まれた。
「サスペンスドラマとか、あるでしょ。あれを親と一緒に観てると最後に死ぬシーンがある。それで興味を持って。なんでかわかんないけど、その興味が『寝てる女性』に変わっていった。寝ていると抵抗がないじゃないですか。ドラマで女性が仰向けに倒れてるところに興奮する。バタッと倒れれば、髪がバサっと動く」
サスペンスドラマで性の目覚めを迎えた栗田被告は“意識のない女性の髪の毛”に興奮するようになった。
「頭で女の子の死体を想像するの。テレビは、サスペンスドラマを録画して、それで死ぬシーンだけスローで再生して。そして『擦り付け』る。そうしないと快感を得られなかった」
高校生のころからは外でも「擦り付け」を始めた。電車のドア近くに立ち、座席に座る女性の髪の毛や手を触るという方法だ。
「その位置から頭のてっぺんを触る。座席のところに棒が立ってるけど、その棒に股間をくっつけて、擦り付けてた」
東海道線の下り電車でこれを繰り返すことで養われていったのは“隙のある女性を見極める”感覚だった。そして目の肥えた栗田被告がもうひとつ見えるようになったのが「同業者」たちだ。同じように眠っている女性に対してわいせつ行為を繰り返す男たちが、栗田被告以外にもいるのだ。この一人から「酔った女性をお持ち帰りしてわいせつ行為をする」様子を撮影した写真を見せられたのが一連の事件に至るきっかけだった。接見室のアクリル板越し、少し得意げにも見える様子で栗田被告はこう語る。