未知との遭遇
快活に育った僕ですが、まだ日本に外国人が少なかった子供の頃、イヤな思いを全くしなかったわけではありません。当時の有名なアフリカ系タレントといえば、サンコンさんやゾマホンさんなど。本当はとても知的な人たちなのに、テレビでは滑稽な役回りしか割り当てられていませんでした。その影響で、学校などでは面白おかしくイジられることが多かったんです。
小さい頃は外見(アフリカン)と中身(日本育ち)のギャップでいい思いをしたことはなかったのですが、それがだんだん変わっていったのが中学のときです。
覚えているのは、部活でバスケットボールの試合に臨んだ時のこと。レギュラーでもないのに、ベンチに座らされました。先輩曰く、僕が座っているだけで相手にプレッシャーを与えられるというんです(笑)。
関西、特にお笑いの世界には「オイシイ」という概念がありますが、僕自身も、「これはこれでオイシイかな」と思えるようになっていきました。社会人になった頃には、完全に自分の特徴を「燃料」にすることができるようになっていったんです。
ただ、日本に暮らすマイノリティが全てそうであるわけではありません。カメルーンと日本のハーフである弟や妹たちは、音楽やファッションなどの「カッコいい」分野に進んでいきました。そんな弟から見ると、僕の生き方は「プライドがない」と映るようです。
外見と中身のギャップを笑いに変えることは、周りにおもねる僕の「弱さ」だと言われたこともあります。でも、僕からすると、逆に弟こそ弱く感じられました。「おまえはそんなのを笑い飛ばす強さもないの?」と。誰しも何かで認められたいと思っていて、その方向性が違うだけの話なのですが……。