「選手や首脳陣が現場で作り出す勢い。その裏側で、データが少しでも役に立てばいいんです」(関本氏)
ホークスのデータ野球は、「選手ファースト」の考え方の上に成り立っている。そこが特徴であり一番の強みだろう。
選手ファーストの話を進める中で、三笠本部長から面白いエピソードを聞けた。彼は東大ラグビー部の出身で、監督も務めていた。現役時代、作戦面の対策役も担っていたという。
「ある強豪校のサインプレーを解読することに成功したんです。でも、試合では勝てませんでした。相手が何をやってくるか分かっていたのに、こちらの選手の肉体面がついていかなかったんです(笑い)。そこからですね、データだけでは勝てないということを痛感したのは。それに、そこがスポーツの魅力というか、本質の一つだと思うんです」(三笠氏)
グラウンド上の選手たちは、コンマ数秒の瞬間的なプレーの中でしのぎを削っている。いわば職人的な感覚の世界だ。どんなに素晴らしいデータがあったとしても、その感覚の世界にデータを落とし込めなければ、有効に活用することはできない。
「野球界をはじめスポーツ界には長らく、根拠のない印象論がはびこっていたのは事実です。その中で説得力のある数字を重視することは意味がある。でも、データ重視に偏り過ぎると、今度は、計測できない……つまり数字に換算できないものは意味がないと考えてしまう。どちらか片方ではだめなんです。融合させてこそ、強いチームづくりにつながるのだと考えています」(三笠氏)