ライフ

「私、病気なの!?」認知症の高齢者に薬をのませる難しさ

薬を嫌う高齢者に薬をのませるには?

 父が急死したことで認知症の母(83才)を支える立場となった女性セブンのN記者(54才)が、介護の日々を綴る。今回は「薬」に関するエピソードを明かす。

 * * *
 今、振り返れば、母は若い頃から薬の服用に抵抗感をもっていた。「薬は重病人のもの」と思い込んでいたのだ。それは高齢になっても変わらなかった。血圧などの薬が処方されると、「ちゃんとのんでます」と言いつつ──。

「血圧が下がらないな。薬、ちゃんとのんでますよね?」。2013年、母が認知症と診断されたばかりの頃、かかりつけ医が首を傾げた。私は「はい、たぶん…」と答えたが、当時の私には母の薬を気にする余裕はまったくなかった。父の急死のショックも手伝い、母には妄想、暴言、抑うつなどの症状が一気に噴出。まだ認知症の知識が浅かった私は、散らかった部屋や腐りものがいっぱいの冷蔵庫にも手をこまねいていた。

 そんな中で通院は唯一、癒しがあった。医師と話すと肩の力が抜けたし、調剤薬局では顔なじみの薬剤師さんがいつも明るく声をかけてくれた。

 母が処方されているのは血圧、骨粗しょう症、認知症の薬の3種類、1日3錠。今どきの高齢者としては少ない方らしい。それでも母は毎回、

「え~っ!? 私、病気なの? どこも具合悪くないのに」

 と、判で押したように騒ぐ。

「お薬をきちんとのんでいるから具合が悪くないのよ」と、薬剤師さんがなだめる脇で私は「ちゃんとのんでね」と、1か月分の薬の大袋を渡すだけ。ときどき電話で確認すると、「薬? のんだわよ!」と即答する。それでよしとしていた。

 しかし、やっぱりのんでいなかった。母の独居が始まって半年以上過ぎた頃、意を決して冷蔵庫掃除に挑むと、庫内最上段に大量の薬袋を発見。

 のみ忘れの隠蔽か、断固のまない意思表示か。私は愕然として冷蔵庫を見つめた。

◆風邪にはうどんとみかんがいちばんいいよ

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン