病気の原因はわからない。だが、誘因のひとつは、たしかに「教授会」であった。そこは、文字の消えかけた「自治」の看板を飾って、どうでもいい寝言を長時間かわす小学校の生徒会のような場所だった。「大学教員大衆」は、いまも昭和の風に吹かれている。平成という時代を終える日本社会もおなじ、まだ冷戦時代の前借り分を返済していないのではないか、と著者は強く疑うのだ。
著者は二カ月の入院、二年間のデイケアを経て、この本を書くまでに寛解したが、大学は退職した。とうてい他人事とはいえないスリリングな本で、平成という時代の本質を衝いている。しかしタイトルと表紙カバーは、この本の持つ危機感を読者に伝えていない。それが不満だ。
※週刊ポスト2019年1月1・4日号