別に私自身、お酌はされたくないし、周囲が男性だらけでも構わないのだが、古い体質の組織だとゲストの周囲には女性を配置することが通例となっている。「紅一点」なんて言葉が出るのは当たり前だし、「むさくるしいオッサンばかりでなくかわいい女のコがいた方がいいでしょう、ガハハハ」なんてことを言われることもある。
そこで当の女性がどう思っているのか聞いてみたところ、「いつもこんな感じなので慣れています」と言っていた。これが本心なのかは知らないが、宴席における女性の扱いが「賑やかし」「目の保養」「お酌要員」という場所も日本には案外多いのでは。
参加者全員が男性の会合では、近くのクラブからホステスが20人ほどやってきて宴会場の大パーティーでは酌をして回る。二次会はその店に繰り出し大フィーバーとなるのだ。これを当たり前だと思っている人物が普通にネットに写真を公開すると、炎上する可能性はある。
酌関連のネットの騒動といえば、2016年7月、伊勢志摩サミットの際、とある英文サイトにこんな見出しの記事が出た。
「アンゲラ・メルケルはG7の男性首脳にビールをお酌するよう言われた」
これは日本社会を英語でおちょくる偽ニュースだらけのサイトだが、これを安倍晋三首相が言ったことになっていた。そこで釣られて激怒する人が相次いだが、ジェンダー関連の話題は偽ニュースであろうとも一瞬で怒りを誘発し、偽ニュースと見抜く判断力を鈍らせるほどの破壊力があるのだ。
何はともあれ、真面目な組織であればあるほど、酒席の写真はネットに公開しないが吉だろう。昨年は西日本豪雨前日に安倍晋三首相も含めた「赤坂自民亭」なる酒宴を西村康稔官房副長官らがツイッターに公開し非難された例もある。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など
※週刊ポスト2019年1月11日号