日本人として命を落とした朝鮮人兵士の遺品
同館館長に取材を申し込んでいたが、前述徴用工判決での微妙な両国関係を忖度してか、取材は拒絶されてしまった。そのかわり同館内部を自由に見て回った。炭鉱での徴用工の不当労働や体罰の様子、徴用工の給料手帳や、逃亡徴用工への罰則書類などが展示されており、中々興味深い。日本語ガイドが無くても展示物は日本語なので、案外理解には苦しまない。
なぜ日本政府はこういった類の施設を造らないのだろう、とつくづく思う。かつてソウルの「独島体験館」に行ったことを想い出した。十数億円の総工費で極めて現代的なデジタル演出を用いて「独島領有権の正当性」が整然と展示されていた。何故日本は、「東京大空襲記念館」とか「広島・長崎原爆記念館」とか「沖縄戦記念館」を東京都心に造らないのだろうか。50億円は、日本のような大国からすると大海の一滴だ。
そうした戦争博物館を国立施設として首都に造り、アメリカの大統領が来るたびに見学を義務とさせる、というくらいの気骨はないのだろうか。フロリダで一緒にゴルフをやって笑っている場合では無い。要するに、やる気がないし興味も無い。その一言に尽きる。
「歴史を忘れた民族に未来は無い」という韓国のスポーツ大会での対日批判横断幕を日本のネット右翼がよく揶揄している。確かに徴用工問題では、その横断幕はブーメランのように韓国民に跳ね返っていきそうだ。日韓請求権協定を無視した今般の主張は、巡り巡って日韓関係を悪化させ、韓国民に不利益をもたらすだろう。
しかし同時に「歴史に無関心な民族にも未来は無い」と置き換えれば、それはまさに私たち日本人そのものの映し鏡である。隣国の政治状況は、モザイク的に入り組んでおり、「反日」「親日」という単純な二項対立ではない。
ところで現在はなんとか持ちこたえている文在寅だが、いみじくも盧がそうだったように、いつ「政治報復」の砲火に晒されるかは分からない。