国際情報

古谷経衡氏が釜山の“徴用工博物館”から学んだこと

盧武鉉の墓所(金海市)を訪れた古谷経衡氏。多くの参拝者が訪れていた

 韓国第二の都市・釜山。東京から航空路で約2時間のこの街は、関釜フェリーや「釜山港へ帰れ」などの歌謡曲でも知られる、日本人にとってなじみが深い隣国の大都市である。しかしこの釜山は、盧武鉉と文在寅という、現代韓国の政治史を語る上では欠かすことの出来ない2人の生と死が同居する都市である。評論家の古谷経衡氏が、釜山の“徴用工博物館”を歩いた。

 * * *
 12月──。異様な暖冬に見舞われた列島とは真逆で、釜山に降り立った私は半島の厳しい冬をもう何度か、かみしめている。

 釜山広域圏は、韓国を代表する重工業・造船地帯であるが、ここから金泳三・盧武鉉・文在寅(現)という3人の大統領を輩出している。とりわけ韓国現代史で重要な盧武鉉は釜山を中心に大学生らと共に民主化運動を主導し、人権弁護士として活躍した。大統領退任後、釜山郊外の烽下(ボンハ)村に蟄居していたところ、一族の贈収賄疑惑で保守系の李明博からの「政治報復」が開始された。

 そして2009年5月、投身自殺へと一直線に転落する。盧が投身自殺をした断崖の真下に現在、盧を追悼する壮麗な墓所が建設されている。実はこの墓所の設営の陣頭指揮を執ったのが、現大統領文在寅である。

 盧武鉉と文在寅は、日本では一般的に両者ともリベラル・左派で、文在寅は盧武鉉時代(参与政府と呼ぶ)の青瓦台の秘書室長、と紹介される。しかし両者の関係はそんな書類上のものではない。

 1982年、韓国が民主化運動の大波にもまれる中、盧と文在寅は釜山市で共同法律事務所を経営し、当時「時局問題」といわれた民主化運動弾圧事件の弁護を引き受ける釜山きっての活動的弁護士であった。つまり盧と文在寅は同じ釜の飯を食った弁護士事務所の戦友である。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト