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認知症には恋愛が効く? 記憶障害は進んでも恋バナは明晰

認知症になっても色褪せない恋の思い出

 父の急死で認知症の母(84才)を支える立場となった女性セブンのN記者(55才)が、認知症になって以降展開されるようになった母の「恋バナ」について明かす。

 * * *
 認知症になってから、母は楽しげに昔の“恋バナ”をするようになった。そういう類の話は一切しない人だったから、ちょっと困惑しつつも、恋がもたらす心のパワーアップに感動。年齢は関係ないのだ。

 母が認知症と診断されてから6年。でもその数年前から同じ話を繰り返すなどの異変があったので、発症からは10年近くたつかもしれない。

 そんな母が、認知症になって変わったことがある。昔の恋の思い出を積極的に語るようになったのだ。

 母とは昔から、世間話も人生の悩みも何でも話せる間柄だが、こと恋愛については一度も話したことがなかった。特に理由はないが、その一線を越えないことが母娘の暗黙のルールになっていた。

 しかし認知症の影響か、年を重ねるとそういうものなのかはわからないが、母はあっさりそのルールを破って、自ら語り始めたのだった。

 最初は6年前の父の葬儀前夜だった。いつにも増して大混乱した母は、20才の自分にタイムスリップ。当時の彼氏からの電話を家族が取り次いでくれないと、葬儀の準備に追われる娘の私に向かって、愚痴をこぼしたのだ。

 人生最大のピンチなので仕方がないとは思ったが、長年、封印されていた母の無垢な部分をいきなり見せられたようで、猛烈に恥ずかしく気まずかった。

 タイムスリップは一時的なものだったが、そこから母の“恋バナ”が始まった。お相手となる主役は前述の彼氏が多かった。

 折しも母の転居のために片づけていた実家から、その彼からの手紙の束が出てきた。今も母が好きな美術展への誘いや、ふたりにしかわからない“先日のこと”などの言葉が生々しく、娘としては大いに動揺したのだった。

◆人生の先輩として孫に恋愛指南も

 母の恋バナに「へー」「そうなんだー」とそっけない返答しかできない私に、さすがの母も娘の動揺を察したようで、最近、恋バナの話し相手はもっぱら孫になった。

 私の娘ももうすぐ20才。ちょうど恋バナの中の母と同年代で、ノリが合うのかもしれない。娘の報告によると、いつも恋バナが始まるきっかけは、「Sちゃん(娘)、ボーイフレンドいるの?」。

 このあたりは認知症の母らしいが、どうやら母は当時、2人の男性の間で揺れていたらしい。

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