話が前後して申し訳ないが、元日SPの見どころは古舘伊知郎と3人のホンネトークだったことに間違えはない。横浜中華街の高級店にて行われたトーク、まず話題に上がったのが古舘のインスタグラムデビュー。香取の指示のもと古舘がSNSの扉を開いた。
しかし、これがうまくグルーブしない。上記したように『7.2 新しい別の窓』はSNSを推す。そこから「古舘さんも……」という流れに至ったのだろう。しかし、当の本人はインスタグラムよりも稲垣、草なぎ、香取に夢中なことは明らか。本心は新しい地図をゲストにした『おしゃれカンケイ』にあった。早く回したくて仕方ない、そんな心持ちが画面一杯に漏れ出す。
古舘の熱弁を制しつつ4人で撮影を敢行し、その写真をインスタグラムに公開しようとするもなぜかエラー。高級中華を食べながらの本格的なトークゾーンに入ってからも始末に追われ、「僕ちょっとインスタやりながらですいません」と香取。年長者の熱弁をiPhone片手に聞くという奇妙な絵面が映された。これが生放送の醍醐味か、それともSNSに縛られすぎか……。
上記したように、番組も3人もSNSを猛プッシュする。しかし、実のところ一般人よりも使いこなしていないと思う。なぜなら、稲垣、草なぎ、香取のツイッターはコミュニケーションをひかえているからだ。活動のお知らせはするが、ファンからの反応に言葉で対応することはない(いいね!はする)。
一方通行に近いコミュニケーションは、これまでのメディアとあまり変わらない。推すわりには淡白、そこがちょっと腑に落ちない。特定のファンに返信でもすればトラブルも起こり得るだろう。だが、そんなところにSNSの魅力はある。トラブルと紙一重だから面白い。
『7.2 新しい別の窓 元日SP』の最後、お年玉として完全クローズドな空間で3人と食事ができる権利が視聴者1名に贈られた。前代未聞のプレゼントは、それこそSNSとは正反対の空間。コッチの方が3人に合っている気がしてならない。
しかし、SNSを使った新しい表現を提供しようと試みる3人の活動は魅力的。ゆえに多少のリスクもとってもチャレンジして欲しいと考えるのは部外者のエゴか。稲垣、草なぎ、香取だから可能となるSNS術を披露して欲しい。日本で数少ないスーパースターだからこそ実現するファンとの幸せな交流、それが見てみたい。元日に考えたのはこんなことだった。
●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週1度開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)。