ウラジオストクに集合した出港前の孤児たち。日本が救出した孤児は最終的に765人を数えた 写真提供/日本赤十字社

◆君が代を歌った孤児たち

 ではなぜシベリアにポーランド人が? 19世紀、ロシア帝国の支配下にあったポーランドで独立を勝ち取るための、民衆蜂起が始まった。

 1830年の11月蜂起、そして1863年の1月蜂起でポーランド人が立ち上がった。だが、圧倒的軍事力を誇るロシア軍に制圧され、その結果多くのポーランド人が政治犯としてシベリアに送られたのだった。

 さらにその後の第一次世界大戦では、国土がロシア軍とドイツ軍の激しい戦場となったため逃れてきた人々が加わり、当時シベリアには15万~20万人のポーランド人がいたという。

 戦後、ポーランドは独立を回復したが、大戦末期に起こったロシア革命によって祖国への帰国は困難となった。シベリアのポーランド人は、ロシア内戦の中で凄惨な生き地獄を味わわされ、多数の餓死者や病死者、凍死者を出したのだった。

 こうした惨状を知った極東ウラジオストク在住のポーランド人、アンナ・ビエルケビッチ女史らが「ポーランド救済委員会」を1919年に立ち上げ、「せめて親を失った孤児だけでも救わねば」と東奔西走した。当初は米国の赤十字が動くはずだったが、肝心の米軍が撤退となってはどうしようもなかった。

 そこで1920年6月、ポーランド救済委員会は地理的にシベリアに近く、また軍を派遣していた日本に救援を打診した。すると日本の外務省が日本赤十字社に救済事業を要請し、日本赤十字は、陸軍大臣の田中義一と海軍大臣の加藤友三郎に合意を得て救護活動を決定した。早くもその2週間後、ポーランド孤児らを乗せた輸送船がウラジオストクを出発し、福井県・敦賀港に到着したのだった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン