ライフ

【鴻巣友季子氏書評】文脈も意味もない純粋な存在への憧れ

『私に付け足されるもの』/長嶋有・著

【書評】『私に付け足されるもの』/長嶋有・著/徳間書店/1500円+税
【評者】鴻巣友季子(翻訳家)

 わたしたちはコンテクストの海のなかに生きている。どんな行為にも事柄にも存在にも、なにがしかの文脈と意味が付加されてしまうものだ。なにかを「ただあるもの」として純粋に見るということが、わたしたち人間には出来ない。

 人の目を通したとたん、希望的観測とか、悲観の先取りとか、うぬぼれとか(「わたしモテてる?」)、いじけとか、そんなものに事物は歪められる。洞察する動物である人間とその洞察の不器用さを、長嶋有は愛情をもって絶妙に描く。

 十二編の本短編集に出てくる語り手や主人公には、アラフォーの女性が多い。夫婦の冷戦期をなんとかやり過ごした者、夫婦仲が壊れてしまった者、シングルらしき者、昔の恋愛の傷をまだ少し引きずっている者、次の恋に向かいたい者……。第一編「四十歳」に出てくるこんなフレーズが、各編に通底する、彼女たちのもどかしくも純な思いを表しているのではないか。

「トラやライオンに襲われたいのでなく、物理的に大きな塊のようなそれに、嘘なく、誰のせいでもなく居られ続けたいのだ」

 誰の「せい」でそばにいるとか、そういうのはもう御免。彼女たちは純粋な存在と不在にあこがれる。「白竜」という編では、アニメの魔法少女たちに帯同するぬいぐるみのような小動物がそばにいれば、それだけでなんだかいいのに、と思ったりする。「どかない猫」では、触れることがならない猫の純然たる在り方を尊重する。

関連記事

トピックス

愛娘の死後、4年間沈黙を続けている俳優の神田正輝
《沙也加さんの元カレに神田正輝は…》「メディアには出続けたい」 “本音” 明かしたホスト転身・前山剛久の現在と、ヒゲを蓄えた父親が4年間貫く愛娘への静かなる想い 
NEWSポストセブン
事故現場は内閣府から約200mほどの場所だった(時事通信、右のドラレコ映像はhirofumiさん提供)
《公用車が追突するドラレコ映像》“幹部官僚2人”が乗った車両が火花を散らし…現場は内閣府からわずか200m、運転手は直前の勤務状況に「問題なし」報道【9人死傷事故】
NEWSポストセブン
英国の女優・エリザベス・ハーレイ(写真/Getty Images)
<本当に60歳なのか>英国“最強の還暦美女”が年齢を重ねるほど“露出アップ”していく背景に「現役セクシーアイコンの矜持」か…「王子に筆下ろし」の噂も一蹴 
NEWSポストセブン
発信機付きのぬいぐるみを送り被害者方を特定したとみられる大内拓実容疑者(写真右。本人SNS)
「『女はさ…(笑)』と冗談も」「初めての彼女と喜んでいたのに…」実家に“GPSぬいぐるみ”を送りアパート特定 “ストーカー魔”大内拓実容疑者とネイリスト女性の「蜜月時代」
NEWSポストセブン
女優・高橋メアリージュン(38)
《服の上からわかる“バキバキ”ボディ》高橋メアリージュン、磨き抜かれた肉体でハリウッド進出…ダークファイター映画『グラスドラゴン』でワイルドな“圧”で存在感示す
NEWSポストセブン
株式会社神戸物産が運営する焼肉食べ放題店「プレミアムカルビ」を実食!
《業務スーパー運営の神戸物産が絶好調》専属パティシエもいる焼肉店「プレミアムカルビ」肉は値段なりも実食してわかった“異色”の勝ち筋
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのリリー・フィリップス(Instagramより)
《目がギンギンだけどグッタリ》英・金髪インフルエンサー(24)が「これが“事後”よ」と“ビフォーアフター”動画を公開 地元メディアは「頼んでもない内部暴露」と批判
NEWSポストセブン
韓国の大手乳業会社「南陽乳業」創業者の孫娘であるファン・ハナ(Instagramより。現在は削除済み)
「知人にクスリを注射」「事件を起こしたら母親が裏で処理してくれる」カンボジアに逃亡した韓国“財閥一族の孫娘”が逮捕…ささやかれる“犯罪組織との関係”【高級マンションに潜伏】
NEWSポストセブン
公用車が起こした死亡事故の後部座席に高市早苗氏の側近官僚が乗っていた可能性(時事通信/共同通信)
《高市早苗氏ショック》「大物官僚2名」がグシャグシャの公用車の中に…運転手が信号無視で死亡事故起こす、内閣府は「担当者が出払っている」
NEWSポストセブン
元旦にIZAMとの離婚を発表した吉岡美穂(時事通信フォト)
《やっぱり女性としてみてもらいたい…》吉岡美穂とIZAM、SNSから消えていた指輪と夫の写真「髪をバッサリ切ってボブヘアに」見受けられていた離婚の兆候
NEWSポストセブン
稀代のコメディアン・志村けん
《志村けんさんの3億円豪邸跡地》閑静な住宅街に「カン、カン」と音が…急ピッチで工事進める建設会社は“約9000万円で売り出し中”
NEWSポストセブン
バスに戻る悠仁さま(2026年1月) 
《公務直後にゲレンデ直行》悠仁さま、サークルのスキー合宿で上級者コースを颯爽と滑走 移動のバスには警察車両がぴったりマーク、ルート上の各県警がリレー形式でしっかり警護 
女性セブン