芸能

世界ネコ歩きの岩合光昭氏が映画監督に挑戦、ねこ名優も出演

映画監督に挑戦した世界ネコ歩きの岩合光昭氏(撮影/菅井淳子)

 世界中の“そこで暮らす”ねこたちを撮影する『岩合光昭の世界ネコ歩き』(NHK-BSプレミアム)などで人気を博す、動物写真家の岩合光昭さんが初めて映画監督に挑戦し、話題となっている。しかも原作は、現在女性セブンで連載されている『トラとミケ』の作者、ねこまきさんの累計発行部数50万部を超える大人気コミック『ねことじいちゃん』。これは、じっとしてはいられない! さっそく岩合さんのもとへ──。

「映画監督は男の子の夢の1つですし、やってみたい気持ちは以前からありました。でも、オファーをいただいた時は、ドキュメンタリーしか撮ったことがありませんから、“少し考える時間をください”と言ったんです。なのに、頭の中に次々とシーンが浮かんできて、“ああこれはもう、やる気になってるな”って思ったんです」(岩合さん・以下同)

 主人公の大吉は現在70才。ねこと老人ばかりの小さな島で、ねこのタマと暮らしている。日課は、タマとの朝の散歩と、妻が残したレシピノートの料理を作ること。そんなある日、タマが姿をくらましてしまう──。

「ねこまきさんの原作を読んで、とてもいい作品だと思っていたところに、映画のオファーをもらって、何か運命的なものも感じて、お引き受けしました」

 大吉役は、岩合さん自らがオファーした立川志の輔だ。

「以前、食事でご一緒した時、志の輔さんの話し方が学究肌だったことを思い出して、大吉さんは元校長先生なので、“この役は、志の輔さんしか考えられない”と思いました」

 原作の舞台は、どこかの小さな島となっているが、愛知県三河湾沖にある3つの島をロケハンし、佐久島に決定。映画に登場する35匹のねこはオーディションで選んだ。

「島にもねこはいましたが、野生のねこに演技をしてもらうのは無理なので、動物プロダクションを渡り歩き、100匹以上のねこからタマ役のベーコンを見つけた時の感激は今も忘れられません。本当に嬉しかったですね。この作品は、ベーコンがいなければできなかったと思います。それほど優秀な役者さんでした!」

“プロねこ”たちとの撮影は、思いがけない苦労が。

「島にいるねこの設定ですから、島の人からもらった魚を食べるシーンがあるのですが、彼らはキャットフードしか食べたことがないんですよ! だから、はじめは生魚を見ても食べ物だと認識してくれなくて驚きました(笑い)。魚を捕るなんて、とんでもない!」

 普段の岩合さんは『世界ネコ歩き』で、世界中のねこたちの“暮らし”を撮っている。

 タイの寺院で暮らすねこは仏像にたわむれ、イタリアのねこはパスタを食べ、津軽のねこは、りんごの木に登り、山口のフグ養殖場のねこは稚魚を狙う鳥を追い払う。

 そんなねこたちのベストショットを撮るために、何時間も待ち、ねこと同じ目線になるため地面に這いつくばる。

 だが映画の撮影では、生の魚を食べられるようにすることが、ねこたちの“役作り”の第一歩だったのだ。

「映画に出てくれたほとんどのねこが木に登れない。これまでぼくがねこに対して思っていた常識がここでも通じなかった(笑い)」

 台本には、人間の俳優と同じようにねこのト書きが入っており「ケンカしているふたりを呆れたように眺めるベーコン」など、難易度の高いものもあった。

「でも、ベーコンは一発OKなんです。何があっても動じない。これぞ、スーパーキャットだと思いましたね。ベーコンの演技力には驚かされることが何度もありました」

 と、手放しで絶賛しつつ、

「それはスタッフと人間の俳優さんたちの協力があってこそですけど」

 と、ほほ笑む。

◆ねこがハッピーじゃないと人もハッピーになれない

 普段、どんな映画を見るのかとたずねると、やっぱりねこが出る映画を好んで見るのだとか。

「最近では『ボヘミアン・ラプソディ』。クイーンもよかったけど、ねこがかわいく撮れてましたね。監督がねこ好きなんだと思います。ただ、フレームアウトしたねこがどこに行ったのか、気になって気になって、仕方がありませんでした…」

 物語の脇にやられるねこたちは、いつの間にやら蚊帳の外になる映画がほとんどだという。だからこそ、『ねことじいちゃん』では、すべてのシーンにねこを登場させたかった、と岩合さん。

「ぼくは、常々“ねこがハッピーじゃないと、人間もハッピーにはなれない”と、思っています。だから、撮影する時もねこがストレスを感じないことを第一にしました」

◆岩合光昭が撮る、ねこ映画だから

 映画監督に初挑戦した感想を聞くと…。

「挑戦というのは、死ぬまでできるんじゃないかと思っています。ぼくの場合、みなさんに喜んでもらえるものを作り続けることへ、挑戦し続けているのかもしれません。

 今回の映画も、人だけじゃなく、ねこにも楽しんでもらえる作品になったと思っています」

 久しぶりに会ったベーコンを見つけると、目尻が自然と下がる。

「本当に素晴らしいねこなんで、撮影後、引き取りたいとお願いしたんですが、断られました。引退するまで待っています」

 そう言ってほほ笑む岩合さんは、ねこも、人も、同じように優しい瞳で見つめていた。

【映画『ねことじいちゃん』】

 2月22日(猫の日)より全国ロードショー。ねこと老人ばかりの小さな島で暮らす大吉と、ねこのタマを中心に、島の人々との日常を描く。岩合光昭が贈る、猫だらけのハートウォーミング・ムービー。

監督:岩合光昭
出演:立川志の輔・柴咲コウ・小林薫・田中裕子・柄本佑・銀粉蝶/ベーコンほか
原作:ねこまき(ミューズワーク)『ねことじいちゃん』(KADOKAWA刊)
配給:クロックワークス

【プロフィール】
岩合光昭/いわごう・みつあき 動物写真家。1950年11月27日生まれ、東京都出身。1979年『海からの手紙』で第5回木村伊兵衛写真賞受賞。日本人として初めて世界的なネイチャー誌『ナショナル ジオグラフィック』の表紙を2度飾る。2012年にスタートした『岩合光昭の世界ネコ歩き』(NHK-BSプレミアム)は放送だけでなく関連グッズや写真展も人気。

ベーコン(タマ役)/2015年2月3日生まれ。アメリカンショートヘアのオス。どんな場所でも堂々と落ち着いて演技ができる“ねこ名優“。主な出演作はテレビドラマ『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ系)や映画『ねこあつめの家』、太陽生命CMなど。

※女性セブン2019年3月7日号

関連記事

トピックス

バラエティー番組『孝太郎&ちさ子 プラチナファミリー 華麗なる一家をのぞき見』
コシノ三姉妹や石原4兄弟にも密着…テレ朝『プラチナファミリー』人気背景を山田美保子さんが分析「マダム世代の大好物をワンプレートにしたかのよう」
女性セブン
“アンチ”岩田さんが語る「大谷選手の最大の魅力」とは(Xより)
《“大谷翔平アンチ”が振り返る今シーズン》「日本人投手には贔屓しろよ!と…」“HR数×1kmマラソン”岩田ゆうたさん、合計2113km走覇で決断した「とんでもない新ルール」
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン