芸能

脇役歌舞伎役者が大量廃業 タクシー運転手になるケースも

“廃業”を申し出る役者が増加しているという歌舞伎界

 近頃、歌舞伎界では「三階さん」と呼ばれる役者たちが次々と辞めているのだという。三階さんとは、有名役者と違い役名もなければせりふもない端役で、正式には「名題下」といわれる俳優の一部。昔、控室が大部屋で、舞台からいちばん遠い三階にあったことから、そう呼ばれるようになった。

 彼らは主役を引き立たせるために、「とんぼ(宙返り)」を切ったり、高い所から飛び降りたり、役者が乗る馬の脚や犬の鳴き声などを演じる。三階さんの多くは、一般家庭出身である。歌舞伎が好きで、若い頃にこの世界に飛び込んできた人々だ。

 彼らは、1970年に歌舞伎俳優の後継者不足の悩みを解決するために設立された、一般家庭出身の俳優を育成する独立行政法人「日本芸術文化振興会」の研修を修了している。

「梨園の御曹司や、子役の頃から幹部俳優の家に預けられる部屋子とは待遇がまったく違います。彼らは舞台を下りた後も、修業と称して師匠やその家族のお世話までする。しかも、ハードな割には給料が安く、月収は20万円にも満たないといいます。とんぼを切れば手当てがつきますが、どんなにとんぼを切っても、1か月1万円にしかなりません。とんぼを切りすぎて、体を痛めた役者もいました」(歌舞伎関係者)

 厳しい環境でも、歌舞伎を支えてきた多くの三階さんだったが、近年、急に“廃業”を申し出る役者が増えたというのだ。

◆タクシー運転手に転身する人も

「『高麗屋』で名題下を務めていた松本錦次さんが、昨年3月末に廃業。“今後は一般の役者の道を目指します”とブログで明かしました。彼は40才目前でしたから、限界を感じたのでしょう。同じ『高麗屋』では、大学を中退してまで弟子入りした松本錦二郎さんが2016年に、特別待遇で『部屋子』となった松本錦政さんも今年の3月に廃業したのではないかといわれています」(別の歌舞伎関係者)

 2015年10月に上演されたスーパー歌舞伎II『ワンピース』で人気があった『大和屋』の坂東三久太郎も2016年に廃業した。『橘屋』の坂東橘壽は2016年5月に30才近くなってから弟子入りしたことで注目されたが、2018年4月に廃業。合わせて10人以上の三階さんが辞めている。

「彼らの多くが30代半ばから40代半ば。少ない給料や、役がもらえない、師匠やその家族の世話に明け暮れる日々に疑問を持つようになったのでしょう。

 折しも今は売り手市場で転職が活発化しています。“転職するなら今しかない”という思いが彼らの頭をよぎったのかもしれない。一般の俳優になったり、新派に行って俳優を続ける人だけでなく、サラリーマンになったり、タクシー運転手になった人もいます」(前出・別の歌舞伎関係者)

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト