セレブドラッグと呼ばれる(東京税関が2018年に押収したコカイン)

セレブドラッグと呼ばれる(東京税関が2018年に押収したコカイン)

 コカインは、「セレブドラッグ」と言われるほど覚せい剤に比べて高価。代謝が早く体から抜けるのが早いということもあり、覚せい剤に比べると逮捕者が少ないという。逮捕されるのは他の薬物を使っている者であり、自分ではないと考えていたなら、彼の楽観主義バイアスは高まっていただろう。

 そのため、逮捕された時の影響など、目の前に大きなリスクがあっても、また実際に逮捕されることがあったとしても、それが今すぐ起こる確率は低いはずだと思っていたと考えられる。

 おそらく彼の周りでは、薬物使用の容疑で逮捕された者がいなかったのではないだろうか。禁断症状で苦しんだり、仕事がなくなり違約金の支払いなどで困ったケースが身近で起こっていなければ、逮捕されることの影響や深刻さを実感することもない。おのずと楽観主義バイアスは高くなっていく。「うまくやっていれば捕まる心配はない」と考えるようになり、リスクに対する想像力は弱くなる。

 また、常習者としてその状態が長年続けば、それが日常になってしまう。時折、不安が喚起されたり強まったとしても、その緊張状態は長くは続かない。約2年前から遅刻が急増していたという報道もあるが、一時的に強い不安を感じ、このままではまずいという葛藤があったとしても、その感情は続かず、結局はリスクを軽く見積もってしまう。薬物を止めることより、薬物がもたらす感覚や感情を「利益」と捉えてしまうのだ。

 ハリソン・フォード主演のハリウッド映画『今そこにある危機』ではないが、瀧容疑者は己が抱えている危機を楽観視していたのだろう。

 違約金は過去最高額になるだろうと、様々なメディアが報じている。コンサートや出演作品を始め、各方面への影響も甚大だ。護送される車の中で目を瞑っていた瀧容疑者は、いったい何を思っていたのだろう。

芸能界に薬物汚染はどこまで広がっているのか(東京税関が2018年に押収したコカイン)

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