国内

幹部が明かす特殊詐欺組織のシステムとリスク管理

特殊詐欺グループのリスク管理とは?

特殊詐欺グループのリスク管理とは?

 警察の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、前回に引き続き、特殊詐欺犯罪の裏事情について掘り下げる。

 * * *
「オレオレは種類がすごく多くてね。成りすましから未発行株、保証金から架空請求、マルチの投資に不動産と手口が何種類もある。それに組織によって得意不得意がある」

 暴力団関係者らに取材をしていると、確かに特殊詐欺は組織によって、得意とする詐欺の種類やシステムが異なっていることがわかる。オレオレを劇場型の振り込め詐欺に進化させている組織、税金や保険料、公共料金と対象を変えては還付金詐欺を続ける組織もあれば、「儲かります」と電話して未公開株や外貨など手を替え品を替えだます組織もあるという。

 今回、話を聞いたのは反社組織下部の有力団体トップ。つまりは暴力団関係者、“稼業”の人だ。取材場所は東京駅に近い某ホテルの喫茶室。ここは稼業の人たちがよく利用していると噂のホテルだ。入って行くと、商談中らしきグループが数組テーブルを囲んでいた。誰もこちらに顔を向けないが“見られている”という感覚を覚える。

「ここにも多いが、バーは詐欺師の山だ。入って行けば、稼業や詐欺師は一発でわかる。やつらは頭を動かさず、目の端で入ってきたやつを捉える。どう動くのか、どこに座るのか。カタギのやつらは自分たちの話に夢中だから、こっちには目もくれない」

 喫茶室に入るなり彼の顔つきが変わったが、案内された席に着くと左右に目を走らせ、鼻で笑った。

「組織によって得意な詐欺は違う。日本人なら手の込んだ詐欺もやるが、中国人はオレオレや振り込めが多い。上野には中国のオレオレ詐欺専門がいる。この手の詐欺は、どれも事務所が特定できない所で電話して、中国のサーバーを経由させている」

 最近は中国人詐欺師による中国人相手の特殊詐欺も出ているらしい。

「日本人で手広くやっているのは東京に会社をいくつも持ち人を集めて、得手不得手で『この人はここ、この人はここ』と配分している。上に誰がいるのか教えないし、働いているやつは全員、偽名だ」

 それがリスク管理だと、彼はこともなげに言う。

「会社に200万円だましたやつが6人いれば、売上は1200万。システム的に電話したやつ、掛け子だな。そいつの取り分は30%だ。1人で1000万だましたら、そいつの取り分は300万。会社には残りの700万が入り、親玉にいくのはその30%だ。このシステムは受け子や出し子が問題で、リスクがあるのはそこだ。捕まるきっかけは、たいがい受取場所と引き出しに行く人間だ」

 掛け子はだます相手に電話を掛ける役、受け子は金を受け取りに行く役、出し子は利用された銀行口座から金を引き出す役だ。

「上にいる者や掛け子は問題ないが、受け子や出し子は捕まる可能性がある。バイトで集める組織もあれば、リストから電話して勧誘するやつらもいる。名簿屋から買った自己破産者したやつやオレオレでだまされたやつ、借金で首が回らなくなったやつのリストさ。どんなことをしても金が必要なやつらだ」

 ここでも名簿屋のリストが活用されている。

「出し子や受け子がどこに金を取りに行くのか、知っているのは組織内の人間。その金を集金しに行くのは信用できるやつだけだ」

 出し子や受け子が持ち逃げすることはないのか?

関連キーワード

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン