国内

幹部が明かす特殊詐欺組織のシステムとリスク管理

「それはないね。やつらは組織の怖さを知っているからね」

 そう彼はうそぶいた。

「マルチの詐欺や金融商品、不動産投資詐欺は、傍目に普通の会社と変わらない。普通に社員を募集する。新入社員を掛け子にして電話で商品を売り込ませる。掛け子には掛け子の心理があって、1件成功すると自信がつく。これは危ない、ここはヤバイと思っても、人をだました心理は快感なんだ。そうなると次から次だ」

 普通の会社に見せかけている組織では、掛け子が受け取るのは、基本給に成功報酬5%+αだという。

「生業として詐欺をやっている所は、不動産投資詐欺に取りかかっている。ひどい物件を本当に売ってしまうから悪徳商法と言われるんで…」

 こういう取材ではよくあることだが、進行中の手口らしく今は詳細を書けない。

「スマホでアダルトサイトを見ると、あるアプリが勝手にダウンロードされる詐欺もある。何を見てもバナーだけがずっと付いてきて、その料金を請求する。出会い系サイトのサクラやアダルトサイトの架空請求と違って、見つかりにくい。アンドロイドはアプリの審査が緩いから、そこを狙ったものだ」

 スマホを利用した特殊詐欺やアプリ版の詐欺は、さらに進化しているようだ。

「儲けられるかどうかは、だます手口を考えるのが得意かどうかだ。そんな俺らをだますやつもいるがね」

 稼業をだます。そんな人間がいるのか?

「“黒サギ”だ。やつらは俺らの裏をかいてくる。もともとは、オレオレ詐欺師を詐欺るやつらのことさ。詐欺でだまされた人の所に行って、だました詐欺師はあそこでやっているから、行って金を取り返してきてやる。だから礼金を寄こせって。やつらの手口も巧妙になっている。めったに会うもんじゃないが厄介な連中だよ」

 詐欺師を詐欺るやつもいる。特殊詐欺の世界も弱肉強食らしい。

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