芸能

滝沢秀明が『滝沢歌舞伎』に込めたメッセージを読み解く

『滝沢歌舞伎』は今年はSnow Manが主演

 滝沢秀明が昨年まで13年間、主演を務めた舞台『滝沢歌舞伎』。今年はSnow Manがその座を引き継いでいる。昨年引退し、プロデュース業に専念している滝沢は舞台の演出を手掛けた。滝沢はどんな思いを込めたのか? 舞台を取材したコラムニストで時代劇研究家のペリー荻野さんが読み解く。
 
 * * *
 新橋演舞場で上演中の『滝沢歌舞伎ZERO』(企画・構成・総合演出ジャニー喜多川)。この舞台を観て個人的に感じたのは、演出の滝沢秀明のメッセージだった。

 とにかく序盤は観てびっくり。ジャニーズJr.のSnow Manの9人が中心の舞台だが、歌やダンスはもちろん、舞台に降り注ぐ桜吹雪の花びらが300万枚。足首が埋まるほどの桜って。さらに時速15kmで回転する「メカ太鼓」とともに、彼らが腹筋を駆使して体を起こしながら打ちまくる恒例の「腹筋太鼓」。観てるこっちの腹筋も緊張するような音色が鳴り響くのである。おーっ。

 驚くべき場面連発だが、そんな中、私が注目したのは、二幕の芝居「満月に散る鼠小僧~望んでいたのは『笑いあり、涙なし』」である。

 江戸庶民の人気者、鼠小僧が散ったことで、彼を追っていたはずの岡っ引き(岩本照)や同心(宮舘涼太)たちまでもが気力を失い、江戸に悪がはびこる。クライマックスでは、滝の中での悪との大立ち回りがあり、大量の水が上から下から大噴射。この場面で使われる水(メンバーの佐久間大介によると、これは雪解け水)は実に9トン。Snow Man、ひとりあたり1トンってことですね…。

 ここで重要なのは、鼠小僧が「散った」ことである。冒頭、出てきた散った鼠の姿を見れば、それは滝沢がNHKの時代劇シリーズ『鼠、江戸を疾る』で演じた鼠小僧を思い出させた。滝沢鼠小僧は、従来のほっかむりの泥棒ではなく、覆面から涼しい目がのぞくという義賊スタイル。独特の美学があった。2005年に大河ドラマ『義経』でもタッグを組んだ演出家・黛りんたろうらとともに作りあげたこだわりのスタイルであったはずだ。

 パート1の放送後、ファンから「続編を」との声がたくさん届き、パート2が製作された人気作である。滝沢は、今回、舞台上で鼠小僧を「散らせる」ことで自らの持ち役を完結させ、次世代へとつなげようとしていたのだと思う。

 そして、もうひとつ大事なのは、この舞台をジャニーズJr.ファン世代が見に来ているということ。現在の10代、20代はテレビの地上波で時代劇を見たことがほとんどない人も多い。私も「捕物帳」「忠臣蔵」などと言われてもピンとこない世代と話して、カックンとなることが増えてしまった。

 今回の舞台では、鼠を追う「岡っ引き」「同心」などが出てくる。人々は「茶屋」で噂話をし、「瓦版」で「辻斬り」「押し込み」など町の情報を得る。60分ほどの二幕は、時代劇を見たことのない世代(そもそも鼠小僧が義賊と言われることもここで初めて知るのかも?)にこうした時代劇要素を伝える作品でもあった。
 
 滝沢は、『義経』主演の翌年の2006年、新橋演舞場史上最年少座長として『滝沢演舞場』の舞台に立った。2016年の公演では「鼠小僧」の脚本も担当している。今後も「和」をテーマにした作品を作り続ける。時代劇ってこういうもんだよ! 後輩たちをどんどんマゲもので暴れさせるよ! 和物ファン、時代劇ファンとしては、『ZERO』は、滝沢の宣言だと受け止めたい。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト