国内

オレオレ詐欺 出し子を「キャッチがスカウト」は劣化か進化か

オレオレ詐欺の出し子もキャッチでスカウト

オレオレ詐欺の出し子もキャッチでスカウト

 人材募集をかけたとき、人気企業や職種なら優秀な人材を集めやすいが、不人気分野や企業では、それなりの人がやってくる。業務や成果物の質を保つには、仕事のすすめかたなどを変えて品質を維持する工夫を凝らす。そんな工夫が「詐欺」の分野でもすすんでいるという。SNSや掲示板で募集した人材が最近は増えているため劣化している、と言われるオレオレ詐欺グループが劣化した人材でも詐欺が続けられている背景について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 筆者はこれまで、いわゆるオレオレ詐欺など、特殊詐欺に関わる人々について取材してきた。

 最近、強く感じているのは、かつては極めて閉鎖的、そして組織的に行われてきた詐欺が、今ではネットの書き込みなど誰でも接触できる場所から“働く人”を取り込んでいることだ。そこには、中高生などの子供も含まれている。その結果、詐欺に関わる人材が「劣化」を起こしている。

 2019年2月に江東区で発生した「アポ電」強盗殺人事件では、犯行に関わったうちの一人が、ツイッターを通じて「犯行」のアルバイトに加担していた事実も判明した。被疑者三人は詐欺などの仕事をしては飲み歩き、散財し、暴力団関係者との接点もあったとみられる。そして、ついに「ここまで劣化したか」と思わせる事件が起きた。

「いわゆるオレオレ詐欺で逮捕された少年が、池袋のキャッチから勧誘され受け子役をやったと供述したのです。このキャッチの男ものちに逮捕されました。受け子や出し子が、これほどまでに雑な方法で集められていることに驚くしかありません」

 警視庁の捜査関係者がこう話すように、池袋の繁華街を歩いていた時にキャッチされ、特殊詐欺の受け子のバイトをやるなどという、数年前ならあり得ないきっかけで詐欺グループに加わるメンバーが存在している。犯罪グループに加わるよう誘うのだから、本来はもっと慎重に人を集めていた。なぜ、繁華街でスカウトという、雑な方法をとるようになったのか。

 以前に比べて近年は、特殊詐欺に関わると検挙されやすく、また法整備とともに厳罰化がすすみ逮捕されると重罪になり、長い懲役などが待っている。そのため、もっとも逮捕されるリスクが高い受け子や出し子のなり手は不足しがちだ。そうした背景からか、これら末端要員はSNSや、ついには路上での“キャッチ”によって頭数を揃えるしか無くなってきているらしい。だが、やむなく雑な方法をとっているわけではないという、別の見方も出てきた。

 関西地方に拠点を置く指定暴力団関係者で、以前特殊詐欺に関わっていたという男性が次のように解説する。

「確かに(末端要員などの)タマ不足は否めない。捕まって暴力団関係者だとみなされれば、使用者責任で親(組長、幹部)までパクられる。事実、とある広域指定暴力団では、手下に特殊詐欺をさせるな、組織が危なくなるなどと通達まで出しているんです。以前は半グレなど、組員に近しい人間や、半グレの仲間が受け出し(※受け子と出し子)をしていましたが、リスクが高く、誰もやりたがらない。こうした今まで末端だった連中が、さらに下請けの出し子や受け子を作るべく、いい加減な人集めをしたことで “劣化”が進んだという側面は確かにある。でも、一部の連中は、これが極めてクレバーな方法とも見ている。従来より安く使えて足がつかない、完璧な方法かもしれないと」(暴力団関係者)

 極めてクレバーな方法とは、どういうことか?

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン