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2019.05.01 07:00  週刊ポスト

朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』【著者に訊け】

 その原型は札幌の小学生時代に遡る。勉強も運動も共にできた6年生の彼らはクラスこそ別だが家が近く、よく一洋とも2人で遊んだ。特に負けん気の強い雄介は『帝国のルール』に登場する〈ウィンクラー大佐〉の決め台詞、〈未来の己を守るのではなく、今このときの民のために動け〉に心酔し、1組の男子に棒倒しの必勝作戦を熱く説くのだった。

 だが次の運動会ではその棒倒しもなくなり、目標を見失った彼は2組とのサッカーの試合で発奮。智也にわざと足をかけられたと言って、猛然と掴みかかるのである。

「彼らが1組と2組に分かれ、背景が変わった途端、一番の親友が敵に見える。そういう、1つ1つは小さなことを積み重ねた先に香る大崩壊の予感を、一緒に味わってもらいたい」

◆他者貢献に走る際に臭う“何か”

 やがて智也は北大工学部、雄介は文学部に進み、出色は北大伝統の〈ジンパ〉=ジンギスカンパーティ復活を訴えて運動する雄介が、地元テレビ局の討論番組で出会う若者たちの顔ぶれだ。

 社会問題を軽快な音楽に乗せて訴える学内のレイブ団体代表〈安藤与志樹〉や、ホームレスを寒さから救うNPO代表〈波多野めぐみ〉。国と国より個人の関係をと説く韓国人留学生〈李民俊〉等、彼らですら問題意識の切実さや貢献度を比べ合い、兵役に赴く李を見て〈負けた〉と思ってしまうのだ。

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