「定時帰りを白い目で見られないようにするには、1つはドラマの主人公のように『わたし、定時で帰ります。』と宣言すること。2つ目は、集中していい仕事をして、仕事で結果を出すこと。3つ目は、周りの人の仕事に関心を持ち、助けておくことです。自分で集中して仕事をすると、効率的に仕事ができ、余裕が生まれてきます。そのとき、『どう? 手伝うことある?』 と声をかけてあげてください」(菊入氏)

 自分が定時で帰ったあとに残った人が何かのトラブルに対応してくれているかもしれない。周りの人に思いやりを持っていれば、社内での人物評価も下がることはないはずだ。ドラマでもヒロインの東山結衣は、社内から浮いてはおらず、「できるビジネスウーマン」と見られてもいる。

「いつも定時で帰るのに仕事ができて人望も厚い」東山結衣役の吉高由里子

 一方で、何かを犠牲にして目標を成し遂げるのは、日本人が好きなストーリーではある。箱根駅伝や高校野球は青春を犠牲している(ように見える)から、感動的になる。がむしゃらに努力することを美徳とする意識も高く、それは日本人の勤勉さの土台になっているのだが、方向性を間違えると、悪循環に陥る。やはり時間よりも質を追求するべきだろう。

「人生において仕事の時間ばかりになると、他のことをやる時間がなくなり、生活者としての視点が欠けていきます。すると、お客さんの気持ちもわからなくなり、いい商品やサービスを生み出せなくなります。また、自分の業界や会社の常識を“世界の常識”と錯覚し、社会常識が欠けていくことにもなりかねない。企業の不祥事の一因ともなります」(菊入氏)

 ドラマの中の言葉に「定時帰り」の背中を押してくれるヒントがある。「会社だけの人間になるな。人生を楽しめ。色んな人に会え。世界を広げろ」(東山が新人研修のときに社長に言われた言葉)。私生活が充実すれば、仕事もそうなる。逆もまた然り。定時帰りで人生の好循環を手に入れたいものだ。

●取材・文/岸川貴文(フリーライター)

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