芸能

“弥次喜多ドラマ”なぜ自由? 過去に長瀬と七之助が恋人役も

『やじ×きた 元祖・東海道中膝栗毛』で喜多八を演じる和田正人

 これまで何度もドラマや映画化されてきた、弥次さん喜多さんの珍道中。今、再びドラマ化され、自由な設定が話題を集めている。その見どころについて、時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが解説する。

 * * *
 平成から令和へと変るこの時期に、まさかこの二人に会えるとは思わなかった。BSテレ東で放送中の『やじ×きた 元祖・東海道中膝栗毛』の弥次郎兵衛(松尾諭)と喜多八(和田正人)。ご存知、十返舎一九原作、“江戸最大のベストセラー”ともいわれる『東海道中膝栗毛』の主人公たちである。

 女と女房に捨てられた、元役者の喜多八と絵描き気取りの弥次郎兵衛は、伊勢参りの旅に出ることに。しかし、元来のお調子者の二人は、行く先々でトラブルに巻き込まれる。

 ポイントは、とにかく二人が女好きなこと。箱根の賭場では、胸の谷間もあらわな壺振りの姐御(水崎綾女)に「うっふん」と目配せされた喜多さんがメロメロに。三島に向かう街道では、弥次さんが、女の旅人(中村彩実)に「袖すり合うも他生の縁、ついでに夜も…」なんてことを言って、「この爺が!!」と罵倒されて土手から転げ落ちる。宿の女将(宮嶋麻衣)が美人だからと、夜中に二人して、彼女の布団に潜り込もうとする節操のなさである。

 一方で、違法な誘拐や人を泣かせる盗賊たちには、堂々と立ち向かう二人。パンチもキックも棒術も駆使して大暴れし、たちまち悪人たちを倒してしまう…って、あれ? 弥次喜多って、こんなに強かったっけ? 制作スタッフが、かの『水戸黄門』チームだと聞けば、やっぱりラスタチ(勧善懲悪時代劇に欠かせないラストの大立ち回り)は、やらずにはいられないってことですね。

 もうひとつ「やらずにはいられない」のは、このドラマに出てくる十返舎一九先生ご本人。演じているのは、竹中直人。先生は、弥次喜多を密かに見守り、事件の真相をいち早く知らせようと、しばしばメッセージを紙飛行機にしたためて飛ばすのだが、弥次喜多はほぼ無視。

 おかげで悪人に見つかった先生は、腹を刃物でブスリとやられてしまう。「なんじゃ、こりゃあああ」って、絶叫する先生。松田優作ジーパン刑事殉職シーンじゃないんだから。しかも、先生は、腹に入れていた分厚い原稿用紙(和紙です)のおかげで無傷だし。
 
 弥次喜多は、江戸の肉食男子という言い方もされているが、「女、女、女…」とうわごとで言うほどの欲望一直線の女好き男は、今どき、現代ドラマではなかなか出せない。お色気あり、下ネタあり(第三話で弥次さんは捕まったままトイレに行けず、便意にともだえながら、ついにその場で…)ができるのも、江戸時代の原作がある時代劇ならではだ。

 思えばこの原作は、まったくの別テイストで『真夜中の弥次さん喜多さん』として映画化されている。弥次さん(長瀬智也)と喜多さん(中村七之助)が、熱烈な恋人同士という設定にはファンを驚かせたが、なんだかもう、何が起きてもいい、自由な話なんだということだけは、よくわかった。ネームバリューもあり、自在にアレンジできる弥次喜多の物語が繰り返し、舞台、映画。ドラマになるのも納得だ。

 平成から令和へとするりと抜けていく弥次喜多の姿を見ながら、なんだか平成生まれのドラマキャラは、あれはダメ、これはやり過ぎと窮屈になってるなあと思わずにはいられない。江戸キャラは強し。

関連記事

トピックス

女優・遠野なぎこ(45)の自宅マンションで身元不明の遺体が見つかってから2週間が経とうとしている(Instagram/ブログより)
《遠野なぎこ宅で遺体発見》“特殊清掃のリアル”を専門家が明かす 自宅はエアコンがついておらず、昼間は40℃近くに…「熱中症で死亡した場合は大変です」
NEWSポストセブン
俳優やMCなど幅広い活躍をみせる松下奈緒
《相葉雅紀がトイレに入っていたら“ゴンゴンゴン”…》松下奈緒、共演者たちが明かした意外な素顔 MC、俳優として幅広い活躍ぶり、174cmの高身長も“強み”に
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン