芸能

映画『キングダム』で大沢たかおが演じた「謎の将軍」の正体

映画『キングダム』出演に際し、大沢たかおは15キロも増量したという

 学校で習った古代中国の有名人といえば、「秦の始皇帝」をまず思い浮かべる人が多いだろう。現在公開中の映画『キングダム』では、配下の武将らとともに初の中国統一へと突き進む若き日の始皇帝・エイ政(えいせい)の戦いが活写されている。エイ政を支えた将軍の一人で、映画では大沢たかおが演じた「王騎」の、史料に残された真実の姿を歴史作家の島崎晋氏が紹介する。

 * * *
 映画『キングダム』では、大沢たかおが王騎将軍を演じた。原作の漫画ではプロレスラーのような筋骨隆々たる体型。それとの差があまりに大きなことから、キャストが発表された時点ではミスチョイスとの声が多く挙がったが、さすがはプロの役者。体重を15キロも増やしての肉体改造と演技力で、一連の不安が杞憂であったことをみごと思い知らせてくれた。

 作中で描かれる王騎はエイ政の曾祖父・昭襄王(しょうじょうおう)が定めた「六大将軍」の最後の生き残りで、「秦の怪鳥」の異名で呼ばれた。主人公の信にとってあこがれの存在として描かれているが、前漢時代の司馬遷が著わした『史記』を見る限り、王騎は地味な存在で、その名前が登場するのはたったの2回だけ。

 エイ政の即位とともに、蒙ゴウ(もうごう)・ヒョウ公(ひょうこう)と並んで将軍に任じられたとするものと、エイ政が即位してから3年目の死亡記事があるのみなのである。戦場での活躍については一切触れられていない。独特な言葉遣いや唇が非常に厚いといった容姿に関する特徴はもちろん、その最期にしても、すべては『キングダム』作者・原泰久の創作である。

 そもそも「六大将軍」という制度と名称からして、原泰久の創作なのだが、昭襄王の時代に秦の版図が著しく拡大したことと、王騎を除く5人の将軍がその時代に活躍したことは『史記』からもうかがえる。

 エイ政の祖父・孝文王(こうぶんおう)は3年、父の荘襄王(そうじょうおう)は3日と、ともに在位期間が短かったことから、エイ政の即位とともに将軍に任じられた王騎・蒙ゴウ・ヒョウ公の3人が昭襄王以来の頼もしき存在であったことは間違いあるまい。そのわずかな手がかりから、王騎を非常に魅力的な人物に膨らませた原泰久の想像力と創造力はどちらも相当なものである。

関連記事

トピックス

成年式を控える悠仁さまと第1子を出産したばかりの眞子さん(写真・右/JMPA)
眞子さん、悠仁さまの成年式を欠席か いまなお秋篠宮家との断絶は根深く、連絡を取るのは佳子さまのみ “晴れの日に水を差す事態”への懸念も
女性セブン
ボニー・ブルーとの2ショット(インスタグラムより)
《タダで行為できます》金髪インフルエンサー(26)と関係を持った18歳青年「僕は楽しんだから、被害者になったわけじゃない」 “捕食者”との批判殺到に反論
NEWSポストセブン
2人は結婚3年目
《長髪62歳イケオジ夫との初夫婦姿》45歳の女優・ともさかりえ、3度目の結婚生活はハッピー 2度の離婚を乗り越えた現在
NEWSポストセブン
オーナーが出入りしていた店に貼られていた紙
「高級外車に乗り込んで…」岐阜・池田温泉旅館から“夜逃げ”したオーナーが直撃取材に見せた「怒りの表情」 委託していた町の職員も「現在もまだ旅館に入れない」と嘆き
NEWSポストセブン
記者の顔以外の一面を明かしてくれた川中さん
「夢はジャーナリストか政治家」政治スクープをすっぱ抜いた中学生記者・川中だいじさん(14)が出馬した生徒会長選挙で戦った「ものすごいライバル候補」と「人心を掴んだパフォーマンス」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博内の『景福宮』での重大な疑惑が発覚した(時事通信)
《万博店舗スタッフが告発》人気韓国料理店で“すっぱい匂いのチャプチェ”提供か…料理長が書いた「始末書」が存在、運営会社は「食品衛生上の問題はなかった」「異常な臭いはなかった」と反論
NEWSポストセブン
63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志さん
《63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志》不良役演じた『ビー・バップ』『スクール☆ウォーズ』で激変した人生「自分の限界を超える快感を得ちまった」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
サッカー界のレジェンド・釜本邦茂さんが「免許返納」密着取材で語っていた「家族に喜んでもらえることの嬉しさ」「周りの助けの大きさ」
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがニューシングル『Letter』をリリース(写真・左/AFLO、写真・右/Xより)
羽生結弦の元妻のバイオリニスト・末延麻裕子さん、“因縁の8月”にニューシングル発売 羽生にとっては“消せない影”となるのか 
女性セブン
中学生記者・川中だいじさん(14)が明かした”特ダネ”の舞台裏とは──
「期末テストそっちのけ」中学生記者・川中だいじさん(14)が抜いた特ダネスクープの“思わぬ端緒”「斎藤知事ボランティアに“選挙慣れ”した女性が…」《突撃著書サイン時間稼ぎ作戦で玉木氏を直撃取材》
NEWSポストセブン
雅子さまのご静養に同行する愛子さま(2025年8月、静岡県下田市。撮影/JMPA) 
愛子さま、雅子さまのご静養にすべて同行する“熱情” そばに寄り添う“幼なじみ”は大手造船会社のご子息、両陛下からも全幅の信頼 
女性セブン
猫愛に溢れるマルタでは、動物保護団体や市民による抗議活動が続いているという(左・時事通信フォト)
《深夜に猫地面にたたきつける動画》マルタで“猫殺し”容疑で逮捕の慶應卒エリート・オカムラサトシ容疑者の凶行と、マルタ国民の怒号「恥を知れ」「国外に追放せよ」
NEWSポストセブン