山野:実はタモリさんと日本坂道学会を結成しています。酒場で偶然、坂の話で意気投合したのが発端です。私が年長なので会長、タモリさんが副会長。メンバーはこの2人だけです。

團:会長さん、いい坂の条件というのは、あるのですか?

山野:勝手に決めているのですが(笑い)、名坂の条件は、「急である」「湾曲している」「江戸情緒が残っている」「坂名の由来が面白い」の4つ。と言っても坂は好み。團さんがいいなぁと感じる坂が名坂なのです。

團:歴史や由来を知ると、見える景色も変わりますね。きょう訪れた坂も違う季節に再訪してみます。私も坂道学に足を踏み入れちゃったかな(笑い)。

山野:これを機会に、ぜひ江戸の500坂を歩いてください。

●蜀江坂/白金の聖心女子学院の西側に位置する蜀江坂は、緩やかに屈曲しながら流れる優雅な坂。「坂上にあった寺の楓の美しさを、昔の中国の紅葉の名所『蜀江』になぞらえたのが坂名の由来です」(山野氏)

聖心女子学院横の蜀江坂

●奴坂/南麻布3丁目の住宅街を湾曲しながら抜ける奴坂は、すり鉢状に下がって上がる。「由来は、竹ヶ谷(たけがやつ)の小坂で谷小(やっこ)、薬王(やくおう)がなまってやっこう、奴が多く住んでいたからの3説があります」(山野氏)

すり鉢状の奴坂

●薬園坂/南麻布の高台から四の橋交差点へ下る薬園坂(御薬園坂)は、長い急坂。江戸時代に坂の西側に幕府の御薬園(薬草の栽培所)があったのが坂名の由来。なまって役員坂、御役人坂とも呼ばれる。イラン・イスラム共和国大使館外壁の異国の雰囲気と、江戸の坂が交わるのも面白い

役員坂とも呼ばれる薬園坂

●釣堀坂/薬園坂上から下る途中、南麻布3丁目9と11の間を右折すると、閑静な住宅街の間に釣堀坂が出現する。すり鉢状の坂で、狭く急な下り坂の先に平坦な道が少し続き、その先に石段の上り坂がある。「かつて谷間には大きな釣り堀がありました。いま私たちが立っている下り坂の道幅は、江戸時代の道幅と同じと思われます。奥に見える石段の上り坂と合わせて1本の坂道を形成しています」(山野氏)

【PROFILE】
◆だん・はるか/1993年生まれ、東京都出身。聖心女子大学卒業。2010年、芸能界デビュー。女優、タレント、レポーターなど幅広い分野で活躍する。朝の情報番組『ZIP!』(日本テレビ系)にレギュラーレポーター(毎週月・火・木)として出演中。高祖父は三井財閥総帥の團琢磨、祖父は作曲家の團伊玖磨、父は東京・日本橋のコレド室町などを手掛けた建築家・團紀彦氏。

◆やまの・まさる/1943年生まれ、広島県出身。坂道研究家、日本坂道学会会長。早稲田大学卒業。出版社社員時代から趣味で坂道研究に打ち込む。現在はNHK文化センター、朝日カルチャーセンターなどの坂道講座で講師を務める。著書に『大江戸坂道探訪』(朝日新聞出版)など。

●撮影/吉場正和 取材・文/上田千春

※週刊ポスト2019年5月3・10日号

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン