フジキセキは平成4年に生まれたSSの初年度産駒。2歳(当時は3歳)8月のデビュー戦、10月のOP特別と連勝後、12月の朝日杯を勝ってSS産駒初のGI馬となった。翌年3月の弥生賞も勝ってクラシックの本命といわれ、三冠の期待さえあったが、皐月賞を前に屈腱炎を発症していることが判明、そのまま種牡馬入りが決定した。

 私がその事実を知ったのは、ちょうど日高のある牧場を訪れていたとき。引退という電話を受けたばかりの牧場主に知らされたのだが、彼は「よし、ダービー、いけるぞ!」と叫んだ。それだけ、フジキセキは他の生産者にとって大きな存在だった。

 若い種牡馬はサンデーサイレンスの代用として人気を集めた。初年度産駒が4歳になった平成12(2000)年には種牡馬リーディングの第6位にランクされるが、カネヒキリやキンシャサノキセキなどダートや短距離の活躍馬が多かったからか、種牡馬としてはやや地味な印象だった。それでも15年連続してベスト10入り。長い間生産界に貢献したといえる。

 さて、ヴィクトリアマイルの勝ち馬13頭のうちエイジアンウインズ以外の12頭は、いずれも前走で敗れている。ウオッカとブエナビスタはドバイだったので、健闘したともいえるが、ダンスインザムードは桜花賞を勝った後14戦未勝利だったし、牝馬三冠のアパパネも4歳初戦のマイラーズCで4着。ヴィルシーナは25年にこのレースを勝った後の6戦、掲示板にすら載ることができなかったのに26年に連覇達成。やはり27年、28年と連覇を果たしたストレイトガールの前走はそれぞれ高松宮杯13着、阪神牝馬S9着だった。近走不振ではあったが、底力を信じ、大目標を見据えてきた結果だろう。

 ズバリ、キーワードは「復活」だ。今年の有力馬も華々しい勝利からは少し遠ざかっている。

 29年の2歳牝馬チャンピオンのラッキーライラックは、チューリップ賞以後の5戦勝ち星がないが、うち3回の勝ち馬はアーモンドアイ。ジェンティルドンナの2着4回というヴィルシーナに似ており、人気の中心となりそうだ。

 東京マイルのGⅠを勝っているアエロリットは、ここ2戦海外のレースで敗れているが昨秋は牡馬相手のGⅡ毎日王冠を制している。

 平成27年の桜花賞馬レッツゴードンキは、その後1200mから2400mまで、北は北海道から南は香港まで、芝・ダートを問わず重賞ばかり26戦を走って勝ったのは2年前の京都牝馬Sだけ。だが、掲示板には15回も載っている堅実さが光る。

 3頭とも「復活」というキーワードがふさわしいほど低迷しているとはいえない。

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