◆北朝鮮と対等に交渉していいのか
果たして、過去2回の日朝首脳会談に関連して、このような宣伝を公然と行っている国を、日本は対等な交渉相手と見て良かったのだろうか。「総理野郎」「白旗を掲げて……」とまで馬鹿にされたにもかかわらず、日本はこれに対する何の抗議も行わないばかりか、北朝鮮の言いなりになっていたのである。
北朝鮮にとって日本は、国内向けには「体制維持」のための「敵」として利用できるうえ、“金ヅル”としても利用できる、全く好都合な国に映っているのだろう。
日本が金ヅルにされていることを証明する証言がいくつかある。2016年に韓国に亡命した北朝鮮元駐英公使の太永浩(テ・ヨンホ)氏は、2002年の日朝平壌宣言を巡り、当時の北朝鮮指導部に日本から100億ドル(約1兆円)規模の経済協力を期待する声があったと証言している。
太永浩氏以外にも、「少なくとも100億ドル」という証言が、韓国へ亡命した複数の朝鮮労働党幹部からも出ており、114億ドル(約1兆3600億円)という証言もある。
◆第3回日朝首脳会談は開催できるのか
第3回日朝首脳会談は果たして実現するのだろうか。筆者は、北朝鮮は首脳会談に前向きではないと考えている。冒頭で述べたように、日本から要求を突き付けられるばかりで一文の得にもならない会談だということが分かっているからだ。もっとも、これは北朝鮮側に問題があるからなのだが。
最近、北朝鮮は弾道ミサイルを立て続けに発射しているが、射程距離が200キロ程度のものなら韓国を攻撃するためのものと断言できる。しかし、400キロ以上の弾道ミサイルとなると、単に「韓国に対する脅し」とは言えなくなる。中距離弾道ミサイルの射程を短くして発射している可能性があるからだ。
筆者は今後も弾道ミサイルの発射は続くと考えている。そのなかには、日本を標的とする準中距離ミサイル「ノドン」も含まれるだろう。もし、日本のEEZ(排他的経済水域)内に落下した場合、安倍首相が言っているように「条件を付けずに日朝首脳会談を模索」している場合ではなくなるだろう。
第3回日朝首脳会談を開催するためには、北朝鮮を納得させる規模の「手土産」が必要となるのだが、北朝鮮を利することは日本の世論が許さないだろう。せめて、水面下で北朝鮮外務省との極秘折衝が続けられているのなら、日本に有利な形での会談が実現する可能性があるのだが……。