「右打者の左手、つまり引き手は、バットコントールをつけるために重要です。日常生活の細かい作業で左手を使うのに慣れている坂本は、アウトコースの速球に、左手一本で合わせてライト前に運ぶこともできるし、インコースを器用にレフト線のフェアゾーンに入れることもできる。坂本でなかったらファールになってしまうでしょう。こうした技術は、“左利きの右打者”だからなせる業なのでしょう」
ヤクルト、巨人、阪神で“右の大砲”として通算306本塁打を放った、野球評論家の広澤克実氏は、坂本の好調の要因は「インコースの捌き方」と見る。
「坂本のインコース打ちは天才的です。明らかに得意なコースなのに、インコースを攻めるバッテリーが多いのが不思議で仕方ない。坂本には外角一辺倒で、たまに内角を投げてこそ効果的な配球になるのにセのバッテリーが坂本の好調を支えているようなものですよ」
現役時代に“松井キラー”と呼ばれ、左のワンポイントリリーフとして活躍した野球評論家の遠山獎志氏は、投手の目線から指摘する。
「坂本がインコースのボールをうまく捉えられるのは、持ち前の柔らかい腕の動きと、腰の回転があるからだと思います。インコースを攻めるとしても、胸元に投げ込まないと抑えるのは難しいでしょうね」
坂本の内角打ちは、ロッテ時代に3度の三冠王を達成した落合博満氏や、V9時代の巨人エースで監督経験者でもある堀内恒夫氏など、多くの球界OBからも絶賛されている。
※週刊ポスト2019年5月31日号